妄想や幻想など様々な精神症状を引き起こす精神疾患のひとつに「統合失調症」があります。思春期に発症し、世界中の人口の約1%が罹患するという、決してまれではない病気です。この病気の原因は、他の精神疾患と同様、遺伝的なものと環境的なものの両方が関与すると考えられています。遺伝子レベルの解明は、すでに発症の原因とされる数種類が見つかるなどしていて、その解明に大きな期待が寄せられています。
統合失調症では、周囲の不穏な音を意識的にシャットアウトする「感覚フィルター機能」が弱まる症状が見られます。この感覚フィルターの能力を調べるために、大きな音刺激を与える前に小さな音刺激を与えると、びっくりする度合いが弱まることが用いられます。この度合いを「プレパルス抑制(PPI)」と呼び、値が良好なほど感覚フィルター機能がしっかりしていることになります。
理研脳科学総合研究センターの分子精神科学研究チームは、JSTと協力して、このPPIに関係する遺伝子を調べることで、新たな病因遺伝子を発見しました。PPIの値が高いマウスとPPIの値が低いマウスを掛け合わせて得た1,010匹の孫マウスを解析し、DHAなど不飽和脂肪酸と結合するタンパク質をつくる遺伝子「Fabp7」を検出しました。この遺伝子の発現が低下すると、神経の新生も少なくなっていました。また、ヒトの死後脳を解析すると、PPIの低い成長マウスと同様に、この遺伝子発現が増えていました。これらの知見から、妊娠中に必須の不飽和脂肪酸の適切な摂取が発症予防につながる可能性が出てきました。
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