「春の訪れを告げ、日本人に馴染みのある、もっとも有名な花は何?」と問うと、ほとんどの人が「サクラ」と答えます。このサクラには「ソメイヨシノ」をはじめヒガンザクラ、ヤマザクラなど園芸品種から野生種など様々な種類があります。二度咲くサクラや、香りの強いサクラ、大輪、小輪のサクラなど見た目も豊富で、花の色だけでも、紅色、紫がかったピンク、純白の他、緑や黄色の花びらなど、幅広く楽しめます。
理研仁科加速器研究センターの生物照射チームは、JFC石井農場と共同で、淡い黄色の花をつけるサクラの新品種の作出に成功しました。石井氏と共同で品種登録出願を行ったばかりのこのサクラを「仁科蔵王」と命名しました。2008年には販売を予定しており、新たな楽しみが増えることになります。
仁科蔵王は、同チームが園芸植物のダリア、ペチュニアなどで市販新品種の育種に成功した「重イオンビームを照射して突然変異を誘発させる技術」を駆使し、誕生しました。理研リングサイクロトロンで加速した炭素イオンを、緑のサクラで知られる「御衣黄(ぎょいこう)」の枝に10〜15Gy(グレイ)ほど照射し、枝を青葉桜の台木に接木して、花が咲くのを待ちました。照射した枝の中で、4個体が生存し花をつけ、その中から黄色い花を持つものを選び出しました。変異した形質は安定しており、その花は、黄色ピンクのふちに明黄緑色の筋が入り、咲き始める頃には淡黄緑白色で、終わりの頃に淡黄ピンクが広がり、美しい色の変化が見られました。花の形は半八重で、4〜5センチ程度の大きさをしており、元親の御衣黄と違った新品種となりました。
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