免疫応答の活性化、心臓の形成、細胞の分裂、行動の記憶など様々な生命現象に、細胞内カルシウム情報伝達経路が関係しており、必要な遺伝子群のスイッチを押します。このカルシウム情報伝達経路では、カルシウムによって活性化されるタンパク質脱リン酸化酵素「カルシニューリン」が重要な働きをしています。カルシニューリンは、自身の働きを押える阻害因子を合成します。この阻害因子はカルシニューリンの働きを抑制する一方で、リン酸化するカルシニューリンを活性化するという二面性をもちます。この阻害因子が関わる複雑なカルシニューリン活性制御機構はなぞのままでした。
理研フロンティア研究システムの岸独立主幹研究ユニットは、カルシニューリンの活性が、阻害因子の合成と分解のバランスで精巧に調整されていることを明らかにしました。実験には、ヒトと同様のカルシニューリン制御機構をもつ酵母細胞を使いました。その結果、阻害因子がリン酸化すると分解され、カルシニューリンの阻害活性を調整している新たなメカニズムを発見することになりました。阻害因子の量を適切に調整することはヒトでも重要であり、ダウン症にみられる神経疾患や心肥大は、阻害因子の過剰生産でカルシニューリンが不活性化するためであることがわかっています。阻害因子をターゲットとした新薬開発の道を開くことに、大きな期待が寄せられます。
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