昼夜が逆転して生活のリズムが狂うと、はては不眠症を引き起こすほどの深刻な事態となります。ヒトをはじめバクテリア、ショウジョウバエ、マウスなどさまざまな生物では、リズムを刻む体内時計を持ち、睡眠・覚醒をはじめとする生理機能をコントロールしています。 1970年に、そのリズムを狂わす特異な現象として、真夜中に強い光を浴びると体内時計が一時的に止まってしまう不思議な現象が見つかりました。その現象は「シンギュラリティ現象」と名づけられ、 1975年にそのメカニズムとして、「個々の時計細胞リズムの停止」、「細胞同士の脱同調」という二つの仮説が提出されて以来30年以上、実験的な実証がなく決着がつかないままとなっていました。
発生・再生科学総合研究センターのシステムバイオロジー研究チームは、近畿大学や名古屋大学の研究チームと、メラノプシンという光受容タンパク質を時計細胞に人工的に導入し、光刺激に対して応答性を示す時計細胞を創出することに成功しました。個々の細胞の光応答を測定したところ、シンギュラリティ現象は、各時計細胞のリズムがバラバラとなり、時計全体のリズムが平坦化する「細胞同士の脱同調」の結果であることを実験的に解明しました。すなわち、それぞれの細胞がバラバラに時を刻むため、全体として体内時計が一時的に止まったように見えていたのです。
今回の成果は、 30年以上にわたる難問を解決しただけでなく、時差ぼけや体内時計との関連が指摘されているうつ病や睡眠障害などの治療法を、一歩先に進める可能性を示しました。
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