プレスリリース 独立行政法人 理化学研究所
「バイオリソースセンター」細胞と微生物部門でISO 9001認証
- 最高品質の細胞、微生物を提供し、日本のライフサイエンス研究開発を加速 -
平成19年8月29日
◇ポイント◇
  • ISO 9001の認証、公的な細胞提供機関(細胞バンク)としては日本初
  • 品質維持の万全体制として「バイオリソース品質管理支援ユニット」を設置
  • 研究コミュニティーに「確か」で、「信頼」あるバイオリソースを提供
 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)のバイオリソースセンター(小幡裕一センター長、以下理研BRC)は、細胞材料開発室(中村幸夫室長)と微生物材料開発室(辨野義己室長)の2部門で、「ISO 9001」(あいえすおーきゅうせんいち/あいそきゅうせんいち)の認証を受けました。ISOは、国際標準化機構※1が設定する国際統一規格で、品質マネジメントシステムの規格となるISO 9001の取得は、提供する細胞や微生物が一定の基準を満たし、ウイルスや病原菌の混入などがなく、遺伝子レベルでの品質管理がされていることを保証し、理研BRCが組織としても信頼できることを裏付けるものです。
 国際化の波が押し寄せ、世界中の様々なモノがあふれる今日、一定の品質の保証があると消費者は確かな商品として安心できます。そのため産業界では、自社製品の品質が国際レベルで確かであることを示すため、国際規格のISO 9001の認証を受ける組織的な戦略を展開しています。
 品質マネジメントシステムが大切で重要なのは、産業界ばかりではなく、理研BRCのような研究材料を提供する公的機関も例外ではありません。特に研究コミュニティーにとって重要なことは、研究材料として利用している生物遺伝資源(バイオリソース)の「品質」です。理研BRCは、国内外から貴重なバイオリソースを収集・保存・提供する世界屈指で、日本最大の機関として機能を高めています。
 理研BRCが扱っているバイオリソースの中で「細胞」と「微生物」は、基礎から応用までの幅広い研究分野で使われる研究材料で、特に基礎から応用への橋渡しになる研究領域(トランスレーショナルリサーチ領域※2)でもニーズの高い研究材料です。こうした分野では、より高品質なバイオリソースが要求されており、その品質の低下は、実験の正確性や得られた結果をまとめた研究論文の信頼性にも影響します。このため、理研BRCは、他のリソースに先んじてISO 9001の認証を取得しました。将来的には他のリソースについてもISO 9001認証を取得することを考えています。
 ISO 9001の認証後も、品質マネジメントシステムを適切に運用・維持していくため、理研BRCは「バイオリソース品質管理支援ユニット」を設置し、品質マネジメントに万全の体制でのぞみます。今後、国民の生活向上に結びつくような確かなバイオリソースの提供事業を展開していきます。


1. 背 景
 ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standardization )によって策定される国際統一規格のことです。 環境マネジメントのためのISO 14001、情報セキュリティマネジメントのためのISO 27001などがありますが、ISO 9001は、品質マネジメントシステムについての認証審査用規格で、組織における業務活動の手順を明確にし、その実行結果を記録として残し、継続的に改善していく仕組みを確立するための要求事項を定めたものです。
 理研バイオリソースセンター(理研BRC)では、細胞材料開発室と微生物材料開発室が、約1年半の年月を費やして厳格な品質マネジメントシステムを確立し、このISO 9001認証を受けました。


2. 認証の範囲等
組織 理研BRC 細胞材料開発室(筑波)、微生物材料開発室(和光)
適用規格 ISO9001:2000、JIS Q 9001:2000
認証範囲 バイオリソース(研究用生物遺伝資源)の収集・保存・提供
産業分類 38. 医療及び社会事業
認証書有効期限 2010年7月19日(認証番号:378358)
認証審査機関 ビューローベリタスジャパン株式会社(BVJC)
取得時期 8月29日にISO9001認証書を受理


3. 細胞材料開発室と微生物材料開発室について
 細胞材料開発室では、ヒト及び動物由来の細胞を提供しています。扱っている細胞の多くは、試験管の中で半永久的に維持していくことが可能な「細胞株」と呼ばれる細胞です。例えば、ヒト由来の細胞の多くはがん細胞に由来する細胞株であり、がん研究や免疫研究など幅広い分野で利用され、細胞株なくして今日の医学生物学研究の発展はなかったと言っても過言ではありません。しかし、試験管の中で半永久的に維持できる細胞であるが故に、「微生物汚染」、「他の細胞との取り違え」、「長期培養に伴う形質変化」などの様々な問題が生じます。こうした問題を解決・予防していくためには、万全な品質マネジメントシステムが必要です。これまでの事業においても厳格な品質の管理を行ってきましたが、ISO 9001認証取得を目指して改良を加えたことにより、さらに万全な品質マネジメントシステムとなりました。また、近い将来にはヒト胚性幹細胞株の収集・保存・提供も計画していますが、これに関しても、ISO 9001認証の品質マネジメントシステムを適用して、品質管理に万全を期していく予定です。
 微生物材料開発室(ジャパン・コレクション・オブ・マイクロオルガニズムズ:JCM)は、1981年より微生物のコレクションを始めている我が国のバイオリソース事業のパイオニアです。さらに、今年春に、東京大学の分子細胞生物学研究所の微生物カルチャーコレクション(IAM)の移管を完了し、提供を始めています。IAMに関しては、時代の変遷とともに東大においては微生物株の管理が困難な状況となり、微生物リソースの国内最大級の保存機関である理研BRCに移管することで、我が国の貴重な知的財産である菌株(約3,000株)を散逸させることなく保存することができました。微生物材料開発室は、すでに国際的な微生物保存機関として高い評価と信頼を受けており、新規微生物株の命名・提案に必須である「寄託証明書」の発行数は世界第2位であり、多くの新規微生物株が集約されてきています。ISO 9001認証を取得したことにより、世界中の研究者からの信頼は一層確固たるものとなりました。世界を代表する微生物コレクションとして、今後も貢献していく予定です。


4. 今後の抱負
 日本における知的基盤整備の一環として、理研BRCではバイオリソース整備事業を遂行しています。バイオリソース整備事業には、実験再現性のある高品質なリソースを提供するという「信頼性」と、研究コミュニティーが必要とするリソースを重点的かつ迅速に整備するという「先導性」の両方が重要です。ISO 9001の認証を受けた品質マネジメントシステムは「信頼性」をより一層高めるものになると考えます。また、「信頼性」と「先導性」の確保により、日本におけるバイオリソース整備事業を「継続性」を持って遂行できるに違いありません。そして、バイオリソース整備事業は、「人のくらしの安全や安心」に貢献するものであることを確信しています。


(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所
 バイオリソースセンター 細胞材料開発室
  室長  中村幸夫(なかむら ゆきお)

Tel: 029-836-9139 / Fax: 029-836-9049
 バイオリソースセンター 微生物材料開発室:JCM
  室長  辨野 義己(べんの よしみ)

Tel: 048-467-9561 / Fax: 048-462-4618
 筑波研究推進部 企画課   茂木 久雄(もてぎ ひさお)

Tel: 029-836-9141 / Fax: 029-836-9100
  片桐 健 (かたぎり たけし)

Tel: 029-836-9142 / Fax: 029-836-9100

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


<補足説明>
※1 国際標準化機構
ISO:International Organization for Standardization 。英語ではIOSになるが他の言語では別の順番になる。そこでギリシャ語のISOS(均等、均質)にちなみ、言語や地域によらない短縮名としてISOが選ばれた。
※2 トランスレーショナルリサーチ領域
基礎研究と応用研究とを橋渡しする研究領域のこと。


図 ISO認証書を手にする理研BRCメンバー
右から、細胞材料開発室の中村幸夫室長、小幡裕一BRCセンター長、久保田勉BRC副センター長、茂木久雄筑波研究推進部主査。

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