独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、理研ゲノム科学総合研究センター(榊佳之センター長)が所有する「NMR(核磁気共鳴)※1装置」およびNMR解析試料の調製からタンパク質の立体構造の決定までを一貫して行う「NMR立体構造解析パイプライン※2」を外部の研究者・企業に開放し、利用者の受付を2007年8月24日(金)から開始します。
理研が所有するNMR施設は、文部科学省の委託事業「タンパク3000プロジェクト」の「網羅的解析プログラム」(2002〜06年)において、年間約300のタンパク質立体構造のNMR解析を行ってきました。2007年度以降は、本プロジェクトでの技術開発、施設整備、人材育成、解析体制の構築などの成果を発揮し、特に、本施設が世界に誇るNMR立体構造解析パイプラインの機能を最大限に活用して、わが国の今後のライフサイエンス研究のステップアップに貢献していくための新たな方策として、NMR施設の外部解放事業を展開していきます。
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文部科学省「先端研究施設共用イノベーション創出事業※3」対象利用課題としての利用(成果非占有、経費国支援) |
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成果占有利用(有償) |
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成果非占有利用(有償(割引料金適用)) |
募集のための説明会を、9月5日(水)(横浜)、9月18日(火)(東京)の2回開催します。詳細については、下記URLで閲覧できます。
URL: http://www.ynmr.riken.jp/
利用を希望される方は、公募要領に従い、申請書類の提出をお願いします((2)については個別にご相談ください)。
| 1. |
背 景 |
理研横浜研究所ゲノム科学総合研究センターのNMR(核磁気共鳴)施設(図1)は、タンパク質の立体構造と機能の解析を行う高性能NMR装置40台を備え、世界最大の集積台数を誇る施設です。
NMRは、有機化合物や生体高分子などの構造や性質を調べるために広く使われている分析装置のひとつです。特にNMRを使った分析は、溶液という生体と同じ生理的な条件でタンパク質の動的な高次構造や分子間相互作用の解析を行えるという特徴があります。このため、ポストゲノム研究として注目されるタンパク質の立体構造解析では、X線結晶構造解析と並ぶ有効な方法となっています。
理研では、この施設を用いて、文部科学省の委託事業「タンパク3000プロジェクト」の「網羅的解析プログラム」で、年間約300のタンパク質構造のNMR解析を行ってきた実績があり、この解析能力や効率は、国際的にも類を見ないほど高いものです。
2007年度以降は、本プロジェクトでの技術開発、施設整備、人材育成、解析体制の構築などの成果を発揮し、特に、NMR立体構造解析パイプライン(図2)を活かすことが、今後のわが国のライフサイエンス研究のステップアップに貢献できると評価され、新たなNMR施設の活用推進を展開することにしました。
特に、タンパク質のNMR解析に関して、本施設の国内外の外部研究者への開放を求める声も強まる一方でした。さらに、薬剤候補となる低分子化合物についてのNMR解析など、タンパク質立体構造解析以外の研究に関しても、本施設を開放することが望まれていました。
このため、NMR施設を共用に供することについての基本的な考え方について、プロジェクト実行部門を中心とした「NMR施設検討会」を設置し、理研内外の研究機関や企業からの意見を集約しました。ライフサイエンス研究におけるNMR施設の今後の活用方針や、「共同利用型」の共用方式による外部研究者の受け入れ方、利用に関わる経費負担のあり方、共用制度運営の効率性・透明性の確保のあり方などについて検討し、取りまとめました。
さらに、2006年10月に募集したモニターによる利用の中で出された意見なども参考に、外部開放の適正規模、外部開放の種類の検討、外部開放に伴い生じる問題点、アカデミック分野における成果を公開する利用形態と成果を占有する利用形態、外部開放料金の算定、受託研究課題の受入に関する検討、外部研究者の受入に伴う手続き・契約など、成果の取扱に関する詳細な制度設計を行いました。
このような状況の中、文部科学省が2007年度から開始した事業である「先端研究施設共用イノベーション創出事業」の参画機関として、理研の同施設が採択を受けたことにより、本施設を国の支援のもと、産業界や産学官による共用を通じたイノベーションの創出に向け広く活用していくこととなりました。なお、同じく採択を受けた公立大学法人横浜市立大学の「超高磁場超高感度NMR装置利用による化合物のスクリーニング」と連携して事業を行っており、今回の利用課題公募も同時に開始します。
(横浜市立大学の本事業関)
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| 2. |
応募条件 |
募集形態の(1)については、産業界利用や産学官共同研究利用が対象となります。また、(1)※と(3)については、成果公開が条件となります。詳しい応募条件は公募要領でご確認ください。(2)については特に条件はありません。
なお、いずれの場合もNMR利用の経験の有無については問いません。
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| ※ 成果公開を最大2年間延期可能 |
| 3. |
選考・利用方法 |
(1)および(3)については、提出いただいた理研NMR施設利用申請書(URLよりダウンロード)をもとに、利用課題としての適正を判断の上、選考致します。
(2)については、個別にご相談の上、随時ご利用いただきます。
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| 4. |
スケジュール (1)「先端研究施設共用イノベーション創出事業」対象課題の場合 |
| 募集開始 |
2007年8月24日(金) |
| 公募説明会(1回目) |
| 2007年9月 5日 | (水)14:00〜16:00 |
| 会場:理研横浜研究所交流棟ホール |
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| 公募説明会(2回目) |
| 2007年9月18日 | (月)10:00〜12:00 |
| 会場:理研東京連絡事務所 |
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| 募集〆切 |
2007年9月28日(金) |
| 利用者の決定 |
2007年10月 |
| 利用者受入開始 |
2007年11月〜 |
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| ※ | (2)「成果占有利用」、(3)「成果非占有利用」については、募集開始日以降随時受付を行います。 |
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| (問い合わせ先) |
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独立行政法人理化学研究所 |
| 横浜研究推進部 |
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| Tel | : |
045-503-7091 |
/ |
Fax | : |
045-503-9113 |
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| (報道担当) |
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独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当 |
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<補足説明>
| ※1 |
NMR(核磁気共鳴) |
| 原子核には核スピンがあり、これがゼロではない水素や炭素原子は強い磁場の中に置かれると、2つのエネルギー状態に分かれることが知られている。このエネルギー差に相当する電磁波を当てると、共鳴現象が起きて電磁波が吸収される。その振動数は、原子核の種類と磁場の強さで決まるが、原子核の周りの電子の状態に影響されるので、周辺の電子の分布や原子の結合状態を知る手がかりになる。従って、NMRは分子構造の決定手段として利用される。近年ではコンピューターを利用したMRI(磁気共鳴造影法)として、病気の診断に役立っている。 |
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| ※2 |
NMR立体構造解析パイプライン |
| タンパク質のNMR解析適合性の判定、安定同位体標識試料の調製、多次元NMRデータの測定、これに基づくタンパク質の立体構造の決定などを一貫して実施する施設。2005年には、NMRによるヒト、マウスのタンパク質の立体構造決定において、PDB(Protein Data Bank:世界的なタンパク質立体構造データベース)登録の70%にあたる375構造を決定した実績がある(世界全体では536構造)。 |
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| ※3 |
先端研究施設共用イノベーション創出事業 |
| 2007年度から文部科学省が新たに開始した事業で、大学、独立行政法人などの研究機関が有する先端的な研究施設・機器について、国の経費支援により産業界または産学官による広範な分野における幅広い利用を促進し、イノベーションにつながる成果を創出していくことを目的としている。
理研では、理研が保有するNMR施設を対象とした、「NMR立体構造解析パイプラインの共用化によるイノベーションの創出」について本事業の採択を受けている。なお、同じく採択を受けた公立大学法人横浜市立大学の「超高磁場超高感度NMR装置利用による化合物のスクリーニング」とは、課題公募、選定、成果発表などについて連携して事業を実施する予定(横浜市立大学の本事業関連URL)。 |
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| 図1 理研ゲノム科学総合研究センターが保有するNMR(核磁気共鳴)施設 |
| 写真左:理研西NMR棟 |
| 写真右:NMR装置(900MHz) |
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| 図2 NMR立体構造解析パイプライン |
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発現確認 |
| 無細胞タンパク質合成技術により、対象タンパク質の発現量、可溶性の確認を行う。通常は、複数のコンストラクトを同時に試し、最適なものを選択する。
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フォールド判定 |
で判定に必要な発現量、可溶性が得られることが確認されたタンパク質に関して無細胞タンパク質合成技術により、タンパク質試料を調製し、当該試料が立体構造を形成していることの確認を行い、立体構造解析適合性を判定する。 |
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大量調製 |
| 無細胞タンパク質合成技術により、NMR測定に必要な純度・分量の安定同位体標識タンパク質試料の調製を行う。 |
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NMR測定 |
| NMR装置により、立体構造解析に必要なデータ測定を行う。 |
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NMR装置により、立体構造解析に必要なデータ測定を行う。 |
| NMRスペクトルデータの解析、シグナルの帰属、構造情報(特にNOEデータ)の抽出などの作業を、独自の立体構造解析統合環境ソフトウェア(KUJIRA)により行う。また、プロトン核間の距離の情報を与えるNOEデータの自動帰属をしながら立体構造計算を行う独自のソフトウェア(CYANA)を用いた立体構造決定を行う。 |
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