電磁気的な力は、実験室の中でだけ見受けられるものではなく、物の色や手触りなどの日常の現象や、様々な化学反応、そして原子の構成に至るまで、私たちの身のまわりの現象のほとんどを担っています。この力の引きおこす現象は、ミクロな視点からは、量子電気力学(QED)によって説明されています。素粒子のひとつである電子の磁性も、また、QEDによってとても高い精度まで調べられており、これまでの実験で得られた高精度の測定値と照らしあわせることで、QEDの正しさを検証するものとなってきました。
理研・川合理論物理学研究室と、名古屋大学、米国コーネル大学の共同研究グループは、この電子の磁性の強さを表すg因子と呼ばれる数を、QEDにより1兆分の1の精度まで計算することに成功しました。今回、研究グループは、計算を数値的に行う手法を改良し、さらにコンピュータを用いてすべての計算手順を自動化する方法を開発しました。このシステムを利用してこれまでの理論計算を検証した結果、光子4個による寄与が訂正され、同時に、QEDに基づく理論計算はより信頼できるものになりました。
実験による電子g因子の測定値は、2006年の米国ハーバード大学のグループによるものです。この結果と今回の理論計算から、微細構造定数αの値がα=1/137.035999070(98)と世界最高精度で求められました。αは自然界の基本定数の一つで、電磁気力の強さを表す定数です。もし、αがわずかでも違った値であったとすると、私たちの世界は今とは全く違うものになっているはずです。自然の姿を形作る電磁気力についての私たちの理解は、αの精度まで進んだと言えるでしょう。
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