抗ピロリ菌活性を持つ糖鎖を世界で初めて合成
- アミノ糖のcis選択的な合成法を30年ぶりに新開発 -
PRESS RELEASE HIGHLIGHT
リリース本文へ
合成に成功した、ピロリ菌を寄せつけないとされる糖鎖 人間の胃の中に住んでいる微生物「ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)」は、胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの原因として注目されています。鞭毛を持ち、からだがらせん状によじれているこの細菌は、1983年にオーストラリアのJ・ロビン・ウォレンとバリー・J・マーシャルによって発見され、両氏は2005年にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。 
 ピロリ菌は、胃の粘膜表面に生息していますが、深部の粘膜では見つかっていません。その理由は、深部粘膜に存在する特異な糖タンパク質の糖鎖末端部「cis-N-アセチル-D-グルコサミン」がピロリ菌の増殖を抑制するため、とされています。しかし、この糖鎖は手に入れることが困難で、その構造は立体特異性を持ち複雑なことから、合成することができませんでした。このため、生理作用の解明や医薬品開発のターゲットとする研究に支障をきたしていました。
 理研中央研究所の伊藤細胞制御化学研究室は、この糖鎖の合成に世界で初めて成功しました。 独自に開発した糖の誘導体「環状カーバメート糖」を活用するこの合成法を用いると、これまで何度も挑戦して達成できなかった、ピロリ菌に対する活性があるとされているアミノ糖のcis結合部位を立体選択的に合成することができます。この合成手法は、30年ぶりの新開発であり、糖鎖研究そのものに貢献することにもなります。
 ピロリ菌の増殖を抑えるとされた糖鎖の生理活性の研究が加速すれば、抗生物質では完全に除菌することが難しいとされている“ピロリ菌退治”を可能にする新薬開発も望めます。
リリース本文へ
copyright (c) RIKEN, Japan. All rights reserved.