私たちの脳は、記憶や学習、認知、感情(情動)、などさまざまな機能を持っています。特に、記憶や学習など人間の持つ特徴的な機能は、大脳が重要な役割を果たしていると考えられています。そして、これらの機能は、大脳の表面に広がった神経細胞の層である「大脳皮質」が担っているのです。
大脳皮質は、神経細胞が規則正しく整列した6層構造からなります。また、最近の研究から、神経細胞が目的の層に移動する際、「多極性」と呼ばれる形態から2本の突起を出す「双極性」に変化することが分かってきました。しかし、6層の構造や神経細胞の形態変化がどのようにつくられているのかは謎のままでした。
脳科学総合研究センターの発生神経生物研究チームを中心とした研究グループは、細胞内のタンパク質をリン酸化酵素「Cdk5」が、神経細胞の移動中に形態変化を引き起こし、大脳皮質の規則正しい層状構造の構築の基盤となっていることを明らかにしました。神経細胞の移動が、大脳皮質の構造形成に重要なことはすでに知られていましたが、今回の発見は、移動過程そのものが、神経細胞の形態形成を決定づけることを示唆するものです。
神経細胞の移動を制御するCdk5は、記憶・学習を助け、アルツハイマー病の病態にも関与すると考えられ、これらの治療につながる可能性を秘めてます。
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