生物は、“生体膜”という細胞の表面にある様々な膜を介して、タンパク質など様々な重要な物質を細胞の内外へ運び、生命活動を維持しています。そのうち、プロトン(水素イオン)を輸送し、生命活動の維持に必要なエネルギーを生産するなどの役目を担う「プロトンポンプ」は、巨大なタンパク質の複合体で、主に、モーター部分、膜に埋め込まれたプロトン透過部分やそれらをつなぐモーター支持部分から構成されています。最近、古細菌に存在する古細菌型プロトンポンプが注目されています。骨粗しょう症や癌転移に関与する「液胞型プロトンポンプ」と類似しているからです。しかし、古細菌型プロトンポンプは、大型で複雑な構造を持ち、詳細な働きを明らかにする上で不可欠な構造決定は、困難を極めていました。
理研放射光科学総合研究センターの多量体タンパク質構造解析研究チームでは、古細菌型プロトンポンプの全立体構造を解明する手始めとして、そのモーター支持部分を切り出して結晶化し、兵庫県にある大型放射光施設SPring-8(スプリングエイト)の放射光を用いて構造決定することに成功しました。この構造情報をもとに、他の様々なプロトンポンプと比較することで、プロトンポンプのモーター支持部分が共通して2量体の基本構造を持つことを世界で初めて提唱しました。
古細菌型プロトンポンプ全体の詳細な立体構造が得られれば、骨粗しょう症や癌転移の治療薬開発に道が拓けるほか、バイオナノマシンの実現などへの応用が期待されます。
|