コンビニなどで天使の絵が描いてある黄色い「臓器提供意志表示カード」を目にしたことがありますか? これは、腎臓などの臓器がうまく機能しなくなり、移植でしか治療できない方に臓器を提供する意思を表示するための物です。しかし、せっかく移植しても、免疫システムが臓器を“異物”と見なし攻撃してしまいます。
この拒絶反応を抑えるために、免疫抑制剤が使われています。すでに使われている免疫抑制剤よりも低濃度で拒絶反応を抑えるとの報告がある「ブラシリカルジンA」は、病原微生物であるNocardia brasiliensis
(ノカルジア ブラシリエンス)が生産する天然化合物です。しかしその作用機構は、今までわかっていませんでした。
理研中央研究所長田抗生物質研究室らは、ブラシリカルジンAが、「アミノ酸輸送体」によるアミノ酸の取り込みを邪魔することで、初期免疫反応を引き起こすのに必要な「T細胞」の急速な増殖を抑えることを明らかにしました。アミノ酸が不足したT細胞は、増殖が静止しますが細胞死に至らないため、アミノ酸輸送体は副作用の少ない免疫抑制剤開発のよい標的タンパク質であると期待されます。また、アミノ酸輸送体は、腫瘍細胞でも発現が亢進し、腫瘍細胞の旺盛な増殖を支えていると考えられており、阻害機能を持つことがわかったブラシリカルジンAが、抗腫瘍剤の標的としても有望だと考えられます。
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