私たちは熱湯を触ると“熱い!”と感じ、水で冷やそうと手で水道の蛇口をひねります。このような感覚や運動は、実は、脳の中にある神経伝達物質を用いた情報のリレーによって起こっています。そして、情報伝達の場である神経ネットワークの異常で、行動や学習に障害を来たすことが知られています。
理研脳科学総合研究センター 発生神経生物研究チームらは、神経細胞がネットワークを作るのに重要な「樹状突起」の形成において、神経細胞のひとつである顆粒細胞中の「イノシトール三リン酸(IP3)受容体」が重要な働きをすることを明らかにしました。顆粒細胞中のIP3受容体が、神経栄養因子のひとつ「BDNF」の発現を調節することにより、小脳皮質内の「プルキンエ細胞」の樹状突起形成を制御していたのです。
今後は、この制御機構が運動を司る小脳以外の神経細胞にも共通する現象なのかを明らかにするとともに、3種類のIP3受容体が脳における神経ネットワークの形成、記憶や学習などの複雑な脳機能にどのような働きをするのか総合的に理解することが期待されます。ゆくゆくは、神経の発達異常や脳機能障害の病因解明・治療、老化の制御など、未来への医療へとつながっていくでしょう。
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