書き換え可能な光ディスク「DVD-RAM」は、大容量のデータ記録媒体です。デジタル全盛の現代では、 DVDビデオレコーダーやパソコン用データレコーダーなどに使われ、今や欠かせないメモリ媒体として広く普及しています。
DVD-RAMには、耐熱性・光透過性に優れた誘電体層ではさまれた、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)という物質を材料にした「メモリ薄膜層」があります。データの記録は、それにレーザーを照射し、メモリ薄膜内部の原子結合状態(物質相)を、結晶相という原子が規則的にならんだ状態とアモルファス相という不規則な状態との間を可逆的に変化させることによって行われます。そして、結晶相とアモルファス相ではレーザー光の反射のしやすさ(反射率)が違うことを利用して、情報の記録再生を行います。この変化の速さがDVD-RAMにとって重要なわけですが、この変化について原子の配列と記録の速度との関係は、いまだ明らかにされておらず、謎のままでした。
今回、高輝度光科学研究センター(JASRI)、科学技術振興機構(JST)、理研、松下電器産業(株)、筑波大学は、高速相変化材料であるGe2Sb2Te5とそれよりも相対的に相変化速度が小さいGeTe(ゲルマニウム・テルライド)の構造をX線回折法とコンピューターシミュレーションにより調べた結果、 DVD-RAM の基本材料「Ge2Sb2Te5(ゲルマニウム・アンチモン・テルライド)」における高速相変化現象の完全解明への大きな一歩として、ナノ秒(10億分の1秒)オーダーで生じる構造変化の謎を明らかにすることに成功しました。
図にあるように、結晶Ge2Sb2Te5、結晶GeTe中にある4つの原子が隣の原子と2本の手で結合した正方形ユニット(4員環)の基本的な構造の秩序が、アモルファスGe2Sb2Te5では偶数個の原子からなるより大きな偶数員環ユニット(6、8、10員環)として保持されていることがわかりました。一方、アモルファスGeTeでは異なる奇数員環ユニット(3、5、7員環)へと変化し、結晶相とアモルファス相との間の構造類似性が乏しくなっていました。これらのことから 結晶とアモルファス相が高い構造類似性を持つことが短時間に相変化が生じる秘密であろうと考えられます。 ここで得られた知見は、新しい高速・大容量の相変化光ディスク材料の開発指針になると期待されます。
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