最近、馴染みの言葉になってきた「セロトニン」。行動の動機付けや快感時に神経細胞から分泌される「ドーパミン」や、恐れや驚きなど不快時に分泌される「ノルアドレナリン」と同じ神経伝達物質の一つです。セロトニンの働きが阻害されると、ドーパミンやノルアドレナリンなどによる情報伝達をコントロールすることができず、“うつ”などの精神症状や不安行動を引き起こすと考えられています。しかし、脳内でセロトニンがどのように関与し、このような症状を引き起こすかは、よく分かっていませんでした。
理研脳科学総合研究センター行動遺伝学技術開発チームは、コロンビア大学を中心とする国際研究チームのとして、この不安や“うつ”関連行動に関する脳内での作用メカニズムを明らかにすることに取り組みました。同チームが開発した技術を使って、知覚や思考、記憶などをつかさどる大脳皮質におけるセロトニンの果たす役割を探る実験を行いました。その結果、大脳皮質の 神経細胞においてセロトニンの信号を受け止め、次の神経細胞に送る「5-HT2A受容体」が、不安行動に深く関与していることを発見しました。
セロトニンは、複数の受容体を介して多くの生命現象をコントロールしています。不安行動を制御する仕組みの一部が明らかになったことにより、不安や情動障害などの薬物治療に対して、より有効性の高い方法を確立できる可能性が期待されます。
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