“トカゲのしっぽのように、人間もケガした部分が自然に修復されればいいのに”。ES細胞は、こんな夢物語を現実にする可能性を秘めています。この細胞は、神経や網膜など身体のあらゆる組織・器官に分化する能力を持っています。これまで、サルやマウスなど動物のES細胞に、マウス由来の「PA6細胞」と呼ばれる細胞とともに培養することで神経細胞を作り出すことには成功していました。しかし、この方法では、動物由来の病原体の感染などのリスクがあるため、ヒトへの移植には応用できませんでした。
発生・再生科学総合研究センター細胞分化・器官発生研究グループらは、出産時に得られるヒト羊膜由来の「細胞外マトリックス(細胞外基質)」を培養成分として用い、ヒトES細胞から神経細胞などを高効率で分化誘導させることに成功しました。ヒト羊膜は既に臨床で外科的処置などに用いられており、安全性が実証されているため、ヒトへの移植の安全性が高いと考えられます。この研究によって、パーキンソン病や網膜疾患への臨床的な治療法開発へと大きく前進したといえます。
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