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研究手法と成果 |
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新しい蛍光タンパク質“Keima”の開発 |
研究チームは、沖縄県阿嘉島で採集したイシサンゴの一種、コモンサンゴ(図1)から、新規の色素タンパク質をクローニングしました。この色素タンパク質から、576 nm(ナノメートル、10-9メートル)の波長において吸収が極大となるような4量体を形成するタンパク質を見つけ出しました。この色素タンパク質に遺伝子変異を加え、蛍光活性を付与しました。さらに、励起が極大となる波長を短波長側に、かつ蛍光が極大となる波長領域を長波長側にずらすような工夫を重ね、ストークスシフトを拡張させていきました。
また、4量体のままでは、他のタンパク質と結合させた際に、タンパク質本来の働きを阻害する恐れがあるため、4量体形成を壊す変異を導入し、単量体化しました。
これら一連の作業から最終的に440 nmで励起すると620 nmに蛍光を発する単量体の蛍光タンパク質を作製することに成功しました。この新しい蛍光タンパク質は、現在、使われている蛍光タンパク質と比べて格段に大きなストークスシフトを示します(図2)。この新しい蛍光タンパク質は、励起波長から大きく蛍光波長へと跳躍することから、将棋駒の“桂馬”にあやかり“Keima”という名前を付けました。
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Keimaがもたらす新しい蛍光イメージング |
Keimaが持つ大きなストークシフトは、これまでに無い新しい蛍光イメージングを可能にします。FRET技術ではドナー、アクセプターとしてそれぞれCFP (cyan fluorescent protein)、 YFP (yellow fluorescent protein)が用いられます。このときCFPを選択的に励起するために440 nmのレーザー光を使います。これはKeimaの励起波長と同じです。しかもCFP、YFPとKeimaは、蛍光する色が異なることから簡単に区別することができます。従って、CFP、 YFPをふくむFRETプローブとともにKeimaを細胞に導入すると、440 nmの励起光で、FRETシグナルとKeimaのシグナルをまったく同時に観察することができます。例えば活発に収縮・弛緩を繰り返す心筋細胞において、yellow cameleon(CFP、 YFPをもつカルシウムプローブ)を細胞質に、Keimaをミトコンドリア側に組み込み、発現させたところ、収縮・弛緩に伴うミトコンドリアの動きとカルシウムの動態を同時に、かつ詳細に解析することができました。従来であれば、ミトコンドリアを赤色の蛍光タンパク質で標識し、励起波長をyellow cameleonのものと切り換えて測定していました。そのため、心筋のように速いカルシウム動態を示しながら動くサンプルでは、画像取得の時間差が大きくなり過ぎ、思うように必要とするデータがとれないという問題がありました。
また、蛍光イメージングでは自家蛍光がたびたび深刻な問題となります。自家蛍光には、“細胞がもともと含むNADH※2、NADPH※2及びフラビンタンパク質※2によるもの”、また“細胞に投与する化合物によるもの”などがあります。そのようなバックグランドの蛍光に隠れて、注目すべき蛍光タンパク質の蛍光シグナルが検出しにくい場合があります。ところが自家蛍光の多くはストークスシフトが小さいため、Keimaの蛍光は自家蛍光としっかり区別して観測することができます。
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CFP-Keimaペアによる高精度なFCCSシステムの確立 |
CFPとKeimaは、励起波長は、ほぼ重なっていますが、両蛍光タンパク質の蛍光波長はまったく違い、重なりません(図2)。このため、波長が440 nmの光で両蛍光タンパク質を同時に励起し、それぞれの蛍光を区別して検出することができます。すなわち、一つの波長のレーザー光で二色カラーイメージングが可能となります。通常の二色カラーイメージングではレーザー光を切り換えることが多く、クロス励起、クロス検出、FRETが問題となりますが、CFP-Keimaペアを用いた二色カラーイメージングではそのような問題は一切ありません。
このCFP-Keimaペアが示すこのような特長を、FCCS技術に生かしました。光源であるレーザー光が一つで済むことから、FCCS機器における光学上の技術的課題、つまり微小領域を共通に設定することが容易に実現できるようになりました。また、クロス励起、クロス検出、FRETなどがないために、複雑な補正式を考えなくても、生体分子間の相互作用を定量的に評価できるようになりました。
この技術を用いて、カスパーゼ3によるタンパク質分解(図3)や、カルシウム依存的に起こるカルモデュリンとカルモデュリン依存性酵素との相互作用を試験管内や細胞の中で観察することに成功しました。
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ライフサイエンス研究に革新をもたらす6色カラーイメージング |
| また研究チームは、440 nmの波長で励起極大を示し、570 nmの波長で蛍光極大を示す蛍光タンパク質を、Keimaを元に作製し“Keima570”と命名しました。Keima、 Keima570、 YFP、 GFP、 CFP そして研究チームが以前に開発したMiCy、これら6つの蛍光タンパク質は、一本のレーザー光(458 nmのアルゴンレーザー発振線)で励起することができます。これらの6つの蛍光タンパク質を細胞内の異なる部位に設置し、完全同時励起による6色カラーイメージングを試みました(図4)。6つの蛍光シグナルの区別は、スペクトルイメージング技術によって達成しています。複数のレーザーを使うと、レーザーの波長が異なることによって焦点位置がずれ、共局在に関する歪んだ情報となる危険性が高いとされています。今回得られた一本のレーザーを使った完全同時励起のマルチカラーイメージングは、現存の顕微鏡システムの性能に一石を投じるものであると考えられます。 |
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