プレスリリース 独立行政法人 理化学研究所
謎の短時間ガンマ線バーストの起源に迫る
- 中性子星とブラックホールの衝突か -
平成17年10月6日
◇ポイント◇
  • 短時間ガンマ線バーストの位置を決定−可視光で初の残光発見を導く
  • 銀河の周辺部でバースト−中性子星とブラックホールの衝突を発生源とする説が有力に
  • アインシュタインが予言した重力波の検出に期待高まる
 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)を主体とする日本の研究グループを含む「HETE-2」(日米仏が共同で製作した科学衛星)のチームは、2005年7月9日に、これまでその起源が謎とされていた「継続時間が短い」ガンマ線バーストを検出、その正確な位置を決めました。この情報をもとに、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡などが追跡観測を行ない、「継続時間が短い」ガンマ線バーストの「残光」を発見し、地球から20億光年の距離にある銀河で発生したことを明らかにしました。また、銀河の中での発生位置などに関する考察から、「継続時間の短い」ガンマ線バーストは中性子星同士、あるいは中性子星とブラックホールが合体することによって生じるという説が有力となってきました。中性子星やブラックホールは大昔に死んだ星の名残であり、若い大質量星の崩壊によって生じる「継続時間の長い」ガンマ線バーストとは対照的です。
 この研究成果は、英国の科学雑誌「Nature」10月6日号に掲載されます。


1. 研究の経緯
 ガンマ線バーストは、太陽系のある天の川銀河を遠く離れた、宇宙のきわめて遠方で発生する巨大な爆発です。その正体を明らかにするために、日米仏の国際協力によってHETE-2(高エネルギートランジェント天体探査衛星)が製作され、2000年10月9日に打上げられました。搭載したマイクロプロセッサで自動的にガンマ線バーストの位置を決定し、ネットワークなどを使って10秒から20秒で連絡する機能をもちます。
 HETE-2の主要な使命は、広い空を監視し、ガンマ線バーストが発生したらその位置を直ちに地上に通報すると同時に、そのガンマ線とX線の放射の性質を広いエネルギー範囲に渡って観測することです。日本では理研が中心となって、広視野X線監視装置(WXM)を開発し、ガンマ線バースト位置決定の中心的な役割を担っています。
 ガンマ線バーストは、継続時間の異なる二つのグループに分かれることが、以前から知られていました。今までのHETE-2の観測によって、そのうち「継続時間の長い」ガンマ線バースト(長いバースト)は、大質量星の最期の重力崩壊に伴って発生することが明らかになっていましたが、「継続時間の短い」ガンマ線バースト(短いバースト)の起源は未知のままでした。
 長いバーストに対しては、X線や可視光の「残光」が数時間〜数日続くために、詳しく対応する位置を調べることができたのですが、短いバーストは、位置を決めることが困難で、残光も見つかっていませんでした。
 2005年5月9日にNASAのスイフト衛星は、短いバーストに対して初めての「X線残光」を発見しました。その位置には、比較的近傍の楕円銀河があり、その短いバーストの発生源ではないかと推測されましたが、可視光の残光は見られなかったため、決定的とはいえませんでした。


2. 今回の観測と結果
 2005年7月9日に発生した短いバーストは、HETE-2の広視野X線監視装置(WXM)と軟X線カメラ(SXC)によって正確に位置が決められ、全世界に向けてガンマ線バースト連携ネットワーク(GCN)を通じて通報されました。今ではその起源がほぼ解明された長いバーストの継続時間が典型的には数十秒以上であるのに対し、このガンマ線バーストの継続時間は、約0.1秒で、明らかに短いバーストの種族に含まれるものです。
 この位置を観測した米国のチャンドラX線天文衛星によってX線残光が検出されたほか、すばる望遠鏡をはじめとする各国の地上望遠鏡およびハッブル宇宙望遠鏡によって、短いバーストに対しては、初めて可視光の残光が発見されました。この残光の位置は、地球から20億光年遠方の渦巻銀河の周辺部でした。
 この研究により、短いバーストに関して、以下の点が新たに明らかになりました。
  1. 今回までに位置が決まった二つの短いバーストの距離は、20〜30億光年と近い。(それに比べ、長いバーストは、100億光年程度の距離に見つかることが多い)
  2. 長いバーストに比べて、爆発で放射されるエネルギーは1/1000程度と小さい。
  3. 長いバーストが、星が盛んに生まれている領域で発生するのに対して、今回のバーストは、そのような活動のない周辺部で発生した。5月に観測された短いバーストも古い星ばかりでできている楕円銀河の周辺部で発生したと思われる。
  4. 短いバーストも、X線残光、可視光残光を示すことがある。
 これらの性質、とくに、銀河の周辺部や、古い星ばかりが集まっている銀河で発生するということは、短いバーストの起源としては、中性子星同士の連星、あるいは、中性子星とブラックホールの連星が合体するときに発生するという説によく合うものです。初めて、短いバーストの正体に迫る手がかりが得られたと言えます。


3. 今後の見通し
 今回発見された短いバーストも含めて、どのような天体からガンマ線バーストが発生するからは分かってきましたが、実際にどのようにして強烈なガンマ線を発生する大爆発が起きるのか、その仕組みは分かっていません。今回の発見をもたらしたHETE-2衛星は、打ち上げられてから5年たった現在も順調に稼働しています。今後も観測を継続して、さらに多くのガンマ線バーストの性質を詳しく調べることによって、その謎の解明に迫っていくと期待されます。
 また、今回の発見によって、アインシュタインが予言した重力波が検出される期待も高まりました。我々の銀河(天の川)の中にも、8500万年後に衝突合体する中性子星連星があります。このような連星天体の合体のときに放射される重力波バーストを検出するために、国立天文台の TAMA300や、米国のLIGOなどの重力波検出器が建設されています。今回の現象の起きた銀河までの距離は20億光年でしたが、もっと近い銀河で中性子星連星の衝突合体が起きれば、重力波も検出される可能性があります。

HETE-2のホームページ(理研):http://cosmic.riken.jp/hete/


(問い合わせ先)

国立大学法人東京工業大学理工学研究科 教授河合 誠之
(独立行政法人理化学研究所 牧島宇宙放射線研究室 客員主幹研究員)

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青山学院大学理工学部 助教授吉田 篤正
(独立行政法人理化学研究所 牧島宇宙放射線研究室 客員研究員)

Tel: 042-759-6278 / Fax: 042-759-6542
独立行政法人理化学研究所
牧島宇宙放射線研究室 研究員玉川 徹

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