プレスリリース 株式会社島津製作所
凸版印刷株式会社
株式会社サードウェイブジャパン
独立行政法人 理化学研究所
理化学研究所、島津製作所、凸版印刷が臨床現場で使用できる
試薬‐チップ一体型全自動SNPs解析システムを開発

- 1滴の血液から、わずか1時間半でSNPs解析の完了が可能に -
平成17年9月27日
 凸版印刷株式会社(足立直樹代表取締役社長)、株式会社島津製作所(服部重彦代表取締役社長)、及び独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、試薬‐チップ一体型全自動SNPs解析システム(以下、「本システム」とする。)の試作機を世界で初めて開発し、臨床現場の使用を目指し、わずか1時間半という短時間で精度の高い解析を行うことに成功しました。本システムは検体(血液)からのSNPs解析を全自動化したことで、人為的ミスや解析誤差などのさまざまなトラブルを解消します。これからのオーダーメイド医療の実現を考えた場合、世界標準の診断法を確立することが不可欠であり、今回の試作機の実証により、本格的な遺伝子診断事業の展開が期待されます。
 今回の開発は、理研遺伝子多型研究センター(中村祐輔センター長)がミレニアム・ゲノム・プロジェクトの一環として開発したマルチプレックスPCR※1とサードウェイブテクノロジーズ社(米国ウィスコン州マディソン市)が開発したインベーダー法※2を組み合わせた一塩基遺伝子多型(以下、「SNPs(=single nucleotide polymorphisms)」とする。)タイピングシステムをベースにしたものです。


1. 背景及び趣旨
 2004年9月に理研、凸版印刷(株)、(株)島津製作所は、オーダーメイド医療の実現を視野に臨床現場で使用できる全血からのSNPs解析・診断が可能な技術開発のための共同研究契約を締結し、研究を展開していました。これまで3機関がそれぞれの特徴的な技術を持ち寄り、共同戦略プロジェクトチームを構成し、上記の技術開発を進めてきました。その成果として、共同研究開始後約1年という短時間で、臨床現場で使用可能な診断機器の試作に成功しました。
 オーダーメイド医療は、患者の遺伝的な特徴も加味し、科学的根拠にもとづいた個人に効果的な治療・投薬方法の提供を可能にし、医療・生活の質を向上させます。これにより数兆円にものぼる副作用によって派生する医療費が軽減され、年々増大する医療費を抑制する効果が見込まれます。
 遺伝子多型の一つであるSNPsは、遺伝的な個人差と薬の効き方や特定の病気にかかりやすいか否かを予測する手段の一つとして注目されています。このSNPsの組合せのタイプ(ハプロタイプ)を短時間に簡便に判定し、高度な訓練や知識なしで使用できる本システムが開発されたことは、診察から数時間の間に効果的な治療の処方をすることを可能にし、オーダーメイド医療の実現に大きく貢献します。


2. 試作機の概要
 理研遺伝子多型研究センターでは、2000年4月から高速大量SNP解析システムの立上げを目的に、マルチプレックスPCRとサードウェイブテクノロジーズ社が開発したインベーダー法を組み合わせた、全く新しい解析方法を開発し、SNP情報をもとにした疾患遺伝子の探索などの研究に活用してきました。今回開発した本システムは、この技術をベースにしています。
 従来、この解析には、ゲノムDNA試料の精製、マルチプレックスPCR、インベーダー反応、測定等の複数の工程を経て血液採取から解析結果を得るまで数日を要していました。さらにその臨床応用に当たっては、高い精度が求められるのは言うまでもなく、薬剤の種類や量を決定することを考えると、サンプル収集で患者に負担を掛けることなく、短時間で結果が求めることが必要とされていました。
 その実現に向け、理研、凸版印刷(株)、(株)島津製作所は、各々が有する特許やノウハウに基づいた開発を行い、サードウェイブテクノロジーズ社のインベーダー法を組み合わせ、全く新しい方法による小型で全自動のSNPs解析診断システムを世界で初めて構築し、その実証に成功しました。
 具体的には、(株)島津製作所はSNP診断試薬とその反応系の最適化を行い、試薬一体型の自動解析装置を開発しました。これは血液中に含まれるPCR反応の阻害要因を除く試薬であるアンプダイレクト※3、マルチプレックスPCR、インベーダー反応の条件を最適化したものです。これによって、微量の血液からゲノムDNAを精製することなく、全工程の処理・分析を短時間にすることができました。
 また、凸版印刷(株)が開発したSNPs解析チップは酵素反応を含む複数の工程を一つのチップに一体化したものです。これにより、反応の安定化、保存性のよさ、小型化、取り扱いやすさを実現し、検出精度と感度を高めることを可能としました。

◇本システムの構成と特徴◇

【構 成】
  1. 本システムはチップをセットする反応テーブル、試薬とサンプルの液体搬送ユニット、温調ユニット、蛍光測定を行なう光学ユニットから構成されています。
  2. チップには反応に必要な試薬が全て搭載されており、操作者が血液を一滴だけ入れられるよう工夫されています。


【特 徴】
  1. 試薬一体型チップ: SNPs解析の全ての工程を1つのチップ上で行うことが可能となりました。これにより、煩雑な作業から開放されるだけでなく、より迅速に、また人為的ミスを極力なくした分析が可能となります。従来はDNA抽出・精製装置、分注装置、温調装置、蛍光検出装置などさまざまな前処理や解析装置を必要としました。
  2. サンプルの微量化: 分析に必要な血液の量は1滴(数μl)と微量です。
  3. 検査時間の短縮化: 微量の血液からDNA抽出・精製することなく、1.5時間という短時間でSNPsを解析することができます。従来は検体の前処理として血液からDNAの抽出・精製が必須であり解析時間も半日以上必要でした。


3. 今後の展開
 本成果は日本のみならず世界におけるオーダーメイド医療の実現可能性を高め、社会的貢献度も大きく、医療の質の向上に寄与出来るものと考えております。
 今後は、2006年秋に研究用途として製品化し、さらに病院やクリニックなど臨床現場で使用できる製品の事業化を目指します。


4. 各社概要
1) 株式会社島津製作所
 (株)島津製作所のライフサイエンス事業は、遺伝子とタンパク質解析における、「試薬」「解析機器」これらを活用した「受託解析サービス」の提供によって、総合的な研究開発支援を行っています。さらに、これら「試薬」や「解析機器」の診断市場への展開にも力を入れています。近年発売した試薬製品の中には、遺伝子検査用機器の試薬として使われている遺伝子前処理用の「アンプダイレクト」や疾患マーカーの探索研究に使われているタンパク質同定解析用の「NBS試薬」、タンパク質配列解析用の「ORFinder-N Mass Sequencing Kit」があります。
(島津製作所:http://www.shimadzu-biotech.jp/
2) 凸版印刷株式会社
 1900年創業、世界トップクラスの総合印刷会社として、証券・カード、商業印刷、出版印刷、パッケージ、産業資材、エレクトロニクス、Eビジネス、オプトロニクスの8分野で事業を展開。現在これら既存の事業を「情報・ネットワーク系」「生活環境系」「エレクトロニクス系」へと集約、進化させ、さらに「パーソナルサービス系」「次世代商品系」を加えた新事業領域で「情報コミュニケーション産業」の発展を目指しています。
 現在、次世代商品系ではライフサイエンス分野などへの取り組みを強化しており、プロテインチップの開発、電気化学的検出によるDNAチップの開発も行っております。特に同分野においてはさらなる社会貢献を目指し、付加価値の高い医療医薬品包材の開発など既存事業との融合も含めた新事業の創出を積極的に進めております。
3) 株式会社サードウェイブジャパン
 2002年、サードウェイブテクノロジーズ社の日本法人として設立され、臨床現場の医師や研究者に、効率よく高精度な研究や診断のためのSNP解析のツールとしてインベーダー法を提供しています。
4) 独立行政法人理化学研究所
 独立行政法人理化学研究所は、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する試験及び研究等の業務を総合的に行うことにより、科学技術の水準の向上を図ることを目的とし、日本で唯一の自然科学の総合研究所として、物理学、工学、化学、生物学、医科学などにおよぶ広い分野で研究を進めています。研究成果を社会に普及させるため、大学や企業との連携による共同研究、受託研究等を実施しているほか、知的財産権等の産業界への技術移転を積極的にすすめています。


(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所
遺伝子多型研究センター センター長 中村 祐輔

Tel: 03-5449-5372 / Fax: 03-5449-5433

(報道担当)

株式会社島津製作所
社長室広報グループ 課長  五十嵐 多鶴子

Tel: 03-3219-5535 / Fax: 03-3219-5712

凸版印刷株式会社
広報本部 部長  生明 信夫

Tel: 03-3835-5636 / Fax: 03-3837-7675

独立行政法人理化学研究所 広報室

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


<補足説明>
※1 マルチプレックスPCR
PCRとは、遺伝子を増幅する代表的な方法。具体的には、二本鎖DNAを一本鎖へ分離する際、目的とするDNA領域をはさんだプライマー(DNAを酵素的に合成する際に使用されるDNA断片)の結合、DNA合成酵素によるDNA合成反応を繰り返すことによって、目的のDNA断片を一反応毎に倍加する方法。 PCR反応は通常1つの反応系に1対のプライマーをいれて1種類のPCR産物を合成するが、マルチプレックスPCRは、複数対のプライマーを入れて同時に複数のPCR産物の合成をさせること。1つの反応系で複数の遺伝子を検出できるので、簡便性・コストパフォーマンス・自動化に優れている。
※2 インベーダー法(Invader (R) Assay)
米国サードウェイブテクノロジーズ社(ウィスコンシン州マディソン)が開発したCleavase(R)(DNA修復酵素のひとつ)を用いたSNP解析手法。簡便、高精度のSNP解析技術である。現在、理化学研究所の遺伝子多型研究センターで採用されている。
詳細:http://www.twt.com
※3 アンプダイレクト (Ampdirect)
生体由来の種々の物質が遺伝子の増幅反応を妨害するので、PCRを実施する前に生体試料(血液等)からDNAを分離・精製することが必須であった。島津製作所が8年程前に発見したこれらの増幅反応妨害物質の働きを抑える物質をもとにして、血液からDNAを分離・精製することなしに、血液直接添加でのPCRを実現したのがアンプダイレクト。
詳細:http://www.shimadzu-biotech.jp/reagents/amp/index.html


(参考資料1)


(参考資料2)


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