| Q&A |
| 1. |
何かの役に立つのですか? |
| これは、我々の宇宙とそれを形作る自然法則を理解したいという純粋に科学的な興味に基づく研究成果です。「クォーク星は有るのか?」とか「物質の質量はどのように生まれたのか?」といった疑問に答える際には「役立つ」と考えられます。 |
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| 2. |
凖安定ってほとんど壊れないと言うことですか?どの位の寿命を持つのですか? |
| このようなエネルギー位置に存在する状態としては、非常に安定ということは出来るのですが、およそ10−23秒より長生きであることが分かっただけです。ですから、もしかするともっとずっと長生きなのかもしれませんが、日常の時間のスケールとは較べられないほど短時間で壊れると考えられます。 |
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| 3. |
このような物質の蓄積は可能ですか? |
| 2.にあるように、非常に短寿命であると考えられるので、蓄積は考えられません。集めて実験が出来たら、非常に詳細なことが分かると期待されますが、残念ながら現実的ではありません。 |
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| 4. |
星の中心部分のような物を作って危険ではないのですか? |
| ありがたい(?)ことにすぐに壊れてなくなってしまうので、危険はありません。 |
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| 5. |
宇宙のどこかに、このような物質で出来たクォーク星って本当にあるのでしょうか? |
| あるかもしれませんね。発見された状態がK中間子の束縛状態であるなら、無いほうが不思議に思えますし、そのような夢想は楽しい限りです。クォーク星は重力ではなく、強い相互作用で作られる天体と考えられている為、非常に小さな質量のものが存在する可能性が有ります。ここで見つかったものも、ひょっとしたら小さなクォーク星の仲間なのかもしれません。 |
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| 6. |
このような研究は日本でしかやっていないのですか? |
| 現時点では、理論・実験とも、日本がリードしています。今後どうなるかはわかりません。 |
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| 7. |
日本でしか研究をやっていないということは、無競争ということでしょうか? |
少なくとも、これまでの理論の枠組みに収まりきらない非常に不思議な状態が見つかったのは事実です。すでに実験的に検証しようとしているグループはありますし、理論的研究も急速に立ち上がろうとしています。 中間子の束縛状態であることが確立すれば、「クォーク星は有るのか?」とか「物質の質量はどのように生まれたのか?」といった疑問に答えを与える研究が多く進展すると思われ、熾烈な競争になることが予想されます。 |
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| 8. |
ほかの方法で作ることはできるのですか? |
| 基本的にストレンジネスを原子核の中に導入することが出来る反応を使えば、どの方法でも作ることは可能だと考えられます。 |
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| 9. |
ヘリウムの次はその他の原子核ですね。その実現可能性は? |
| これは、すぐにでも試して見たいことですが、我々の方法がうまくいったのは、標的をうまく選んだからでもあるので、そう単純では有りません。多少時間がかかるかもしれませんが、これらの研究を通して、ハドロン質量の起源に答えられる研究が行えると考えられるので、是非実現したいと思っています。日本は、茨城県東海村にJ-PARC という新型の加速器研究施設を建設中で、そこで、多くの研究が進展すると期待しています。 |
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| 10. |
中間子1つで物質がそんなにも変わるのなら、たくさん入れるとどうなるのでしょう? |
| すばらしい質問です!まさに是非とも実現したい研究です。どのような方法で実験したらいいかは、これから良く考えなければなりませんが、実現の可能性は高いと考えています。 |
| 少し専門的な内容を含むQ&A |
| 1. |
最近、π中間子の束縛状態の研究が話題になっていますが、それとの関連は? |
早野(東大)を中心としたπ中間子束縛核研究は、これまで中間子は原子核内には存在できないと言う「常識」を覆しました。πの場合、原子核とπ中間子を結合させる力は、電気的な力(クーロン力)であることです。πと原子核との間の強い相互作用は斥力的であり、πはどちらかと言うと核内からはじき出されつつも、その一部が核内にしみ込んでいると言った状態を作り出します。相互作用が斥力的なので、原子核自身は密度を含め変化しないと考えられます。一方、 の場合は、強い相互作用自身が非常に強い引力なので、原子核内に溶け込み、その引力によって核の密度を高めると考えられています。 |
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| 2. |
質量の起源についてどのようなことが分かったのでしょう? |
π中間子束縛核研究の場合には、一連の準位エネルギーの違いから、通常核密度の中でのπ中間子の質量変化をすでに導いています。ただし、中間子の媒質密度変化に伴う質量変化を見たくとも、特定の密度(通常核密度)での実験しか出来ません。逆に言えば、実験している(πの存在する)領域の物質密度自体は良く分かっています。 中間子束縛核(超高密度ストレンジ核)の場合には、より広い領域での媒質密度変化やそれに伴う媒質自体の性質の変化を研究できる可能性が有りますが、それぞれが変化するので、何がどう変化しているかの正しい理解には、より多くの実験的・理論的研究が不可欠です。この実験は、全く新しい研究の扉を開けた訳ですが、その詳細についてはこれから明らかになって行くことです。 |
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| 3. |
本当に「 中間子の束縛状態」といえるのですか? |
論文の概要で触れたように、当初の赤石等の理論予想とは食い違う点が有ることは予想されてはいたものの、その差があまりに大きい実験結果なので、論文中で必ずしも 中間子束縛核と断定しなかった訳です。しかしながら、同時にこれと比較しうる詳細な理論計算は存在しないので、 中間子束縛核が最も素直な解釈であることに変わりありません。さらに、より精度の高い理論計算への取り組みが、赤石等を始めとして始まっています。
また、 中間子束縛核ではない解釈の可能性としては、例えば、9つのクォークがひと塊になったような状態(初田 東大教授)やハイパートライトンと呼ばれている粒子と負電荷のπ中間子が束縛したもの(岡 東工大教授)という解釈の可能性があるといった指摘はありますが、いずれも詳細な理論計算はまだこれからです。また、これら他の解釈の可能性自体、非常に不思議で興味ある研究対象であることは間違いありません。
どのような物であると解釈するのが正しいかを含め、すべては今後の研究によって明らかにして行かなければならないことです。今回発見された状態に対する我々の理解が正しいことを、疑いの余地無く示す為の実験も計画しています。
ポジティブに考えれば、実験が理論に先行した、最近ではまれに見る実験結果であると考えることも出来ます。 |
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| 4. |
陽子側で見えたとのこととですが、中性子側はどうなっているのですか? |
実験データの解析で、中性子側のスペクトルでもシグナルは見えていて、この結果については、webで公開され、ニュース等でご存知の方もいるかもしれません。ただし、中性子の検出が難しいことと、必要でない「ゴミ」の中性子を止めることが不可能であり、シグナルを示す為には複雑な解析が必要となる上、統計も大きくは有りませんでした。一方で、今回の陽子側のデータは、複雑な解析を行わなくとも、非常に高統計で明瞭に観測され、その存在自体は揺るぎないものです。
陽子側のデータは、中性子側で観測されたエネルギー位置よりさらに低く、完全に我々の想定外で奇妙な状態です。我々が現在考えているように、陽子側で観測されたものが、図1の右図に近い状態とすると、これは荷電状態に係わらず存在が期待されるので、逆に中性子スペクトラムの中にも同じエネルギー位置に状態が観測されなければならないことを意味します。また、中性子スペクトラムには初期の理論予想通りの図1の中央図に近い状態も存在することが期待されます。このように、当初我々が考えていたより、中性子側は遥かに複雑か想像を持つと考えざるを得えません。中性子スペクトラムをより良く理解する為に、さらに分解能が良く統計精度の高い実験を来年行おうと計画しています。 |