プレスリリース 松下寿電子工業株式会社
独立行政法人 理化学研究所
新方式による高感度な小型遺伝子解析装置を開発
- テーラーメード医療の早期実現に貢献、幅広い分野の検査用途に利用可能 -
平成16年5月17日
松下寿電子工業株式会社と独立行政法人理化学研究所は、2つの遺伝子※1サンプルのそれぞれを構成する塩基配列の違いの有無を高精度に識別できる、電気泳動法を利用した新しい方式の小型一塩基多型(SNPs)※2検出装置を共同開発しました。


【効 果】
  塩基配列の1箇所のみが異なる遺伝子でも簡便に識別できるため、現在までに遺伝子の構造が発症要因の一つであると言われている例えば、乳癌、糖尿病、高血圧症等の発症リスクを知ることができます。また薬剤に対する副作用と遺伝子の研究が加速されることにより、副作用の発生リスクが医療現場で簡単かつ短時間で分かるため、個人の体質に合わせた薬剤投与を行う、テーラーメード医療※3の早期実現に貢献します。
 本装置は小型であり、また複数個の塩基の違いや塩基の長さの違いも識別するため、農畜産物の品種確認等の食品分野、犯罪捜査などの法医学分野にも応用できます。


【特 長】
 1. 短時間で高精度かつ高感度に、遺伝子の塩基配列および長さの違いの有無を検出
2. 卓上サイズの装置で、複数のサンプルを簡単に同時測定


【内 容】
 本装置は、以下の技術により実現しました。
1.擬似固定DNAプローブ※4を用いることにより、一塩基が異なる2種類の遺伝子の電気泳動速度の違いを検出する高感度検知技術
2.2種類の遺伝子サンプルとDNAプローブを遠心力等により、泳動プレートの電気泳動測定部に充填する多検体自動充填技術


【従来例】
 一塩基多型の解析装置は、多くの種類があり、高精度を求めるシーケンス法※5等を用いる装置は、大型・高価格で操作やメンテナンスが煩雑で使用に習熟が必要です。また簡便な装置では、感度や再現性に課題がありました。


【実用化】
 2005年度に実用化を検討中


【備 考】
 1. 本装置開発に用いている原理は、理化学研究所 中央研究所 前田瑞夫主任研究員と松下寿電子工業(株)との共同研究の成果です。
2. 本装置は、第3回国際バイオエキスポ(2004年5月19〜21日)への参考出展を予定しています。


【特 許】
 出願 14件


【特長の説明】
 1. 短時間で高精度かつ高感度に、遺伝子の塩基配列および長さの違いの有無を検出
アフィニティーキャピラリー電気泳動法※6を応用した新規の遺伝子検出技術により、塩基長 の違う遺伝子はもちろん同じ塩基長で一塩基のみ配列が異なっている遺伝子でも短時間で正確に分離することが可能です。さらに松下寿電子工業(株)の光ディスク技術を応用することで、キャピラリー内で分離した遺伝子の蛍光を高精度かつ高感度に検出することができます。
2. 卓上サイズの装置で、複数のサンプルを簡単に同時測定
複数の電気泳動流路を有する泳動プレート上に遺伝子試料や各種試薬類を一定量のせたあとは、試料の充填、電気泳動そして検出までを自動で行ないます。さらに当社のコンパクト化技術を用いて装置の小型化を実現します。


【内容の詳細説明】
 (1) 擬似固定DNAプローブ[4]を用いることにより、一塩基が異なる2種類の遺伝子の電気泳動速度の違いを検出する高感度検知技術
理化学研究所・前田瑞夫主任研究員らによって開発された高感度一塩基多型(SNPs)検出方法で、キャピラリー電気泳動流路内に擬似固定されたDNAプローブに対して、完全に相補する塩基配列を有するDNAと一塩基のみ異なる塩基配列を有するDNAを同時に電気泳動させた場合、擬似固定プローブとの親和力の差で、2つのDNAの泳動速度が異なる原理を使った技術です。比較したい2種の遺伝子の泳動速度差を波形で観察することで一塩基多型(SNPs)の有無を正確に判定することが可能になります。
(2) 2種類の遺伝子サンプルとDNAプローブ[4]を遠心力等を利用して泳動プレートの電気泳動測定部に充填する多検体自動充填技術
光ディスクドライブの回転による遠心力を利用することで、泳動プレートの流路内に遺伝子サンプルとDNAプローブなどを自動充填します。


(問い合わせ先)

松下寿電子工業株式会社  経営企画グループ 広報チーム  檜垣

Tel: 089-966-1508 / Fax: 089-966-6031
Mail: higaki.yoshihide@jp.panasonic.com


独立行政法人理化学研究所 広報室

Tel: 048-467-9271 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


<補足説明>
※1 遺伝子
遺伝をつかさどるDNAの中で、特に意味を持つ配列、例えばある酵素またはタンパク質を作るための情報を持ったDNAを「遺伝子」と呼ぶ。
※2 一塩基多型(SNPs)
SNPs=Single Nucleotide Polymorphismsの略。個々人のゲノムには、ひとつの塩基対が他の人と異なっている箇所が百万種類以上散在しており、これら塩基対の多様性によって、罹患性の違いや薬剤感受性に個人差が生じると言われている。
※3 テーラーメード医療
個々人が持っている遺伝子情報などをもとに、その人に最も適したあるいは最も副作用の危険が少ない薬剤投与を行う治療法。テーラーメード医療を実現するためには簡易で迅速・高感度な一塩基多型(SNPs)の検出が大きな役割を果たすと期待されている。
※4 擬似固定DNAプローブ(コンジュゲートDNA)
一塩基の違いを検出するために用いる、高分子を結合させた一本鎖DNA。同じ塩基長ながら一塩基のみ異なる二種の一本鎖DNAをキャピラリー電気泳動によって分離する場合に使用する。高分子を結合させたことで、電気泳動を行ってもほとんど移動することがないため「擬似固定」と称している。プローブに用いるDNAは、どちらかの試料DNAとは完全に相補するが一方の試料DNAとは一塩基異なるように設計し、キャピラリー管の中にあらかじめ充填しておく。二種の試料DNAは電気泳動中にプローブDNAとの異なる親和性のために、泳動速度に違いが生じる。この違いを観察することで、一塩基の違いを見分けることが可能になる。
※5 シーケンス法
遺伝子の塩基の並びを、端から順番に解析(解読)してゆく遺伝子解析方法。未知の遺伝子配列を解析する手法として広く普及している。
※6 アフィニティーキャピラリー電気泳動法
ある生体物質[A]と特異的な親和性(アフィニティー)を示す物質[P]をあらかじめ、微細管(キャピラリー)の中に入れておき、似たような生体物質[A]と[B]を同時に電気泳動によって移動させた場合、微細管を通っている間に[P]との親和力の違いで[A]と[B]の泳動速度に違いが生じる。この泳動速度の違いを観察することで試料の中に異なる生体物質が存在していたことが証明できる。


写真: 小型遺伝子解析装置
[Go top]