プレスリリース 独立行政法人 理化学研究所
ゲノム科学総合研究センターの榊佳之センター長の就任と
研究センター設立5周年記念講演会の開催
平成16年4月23日
 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)ゲノム科学総合研究センター(GSC)は、2004年4月より新センター長にヒトゲノム国際機構(HUGO:Human Genome Organization)会長である榊佳之博士(GSCゲノム構造情報研究グループ 前プロジェクトディレクター、東京大学医科学研究所前教授)が就任し、また、今年はGSC設立5周年目に当たることから、ゲノム科学総合研究センター設立5周年記念科学講演会「ゲノム科学の今後の展望」を開催します。
 ゲノム科学の発展は目覚しく、科学研究のみならず医療や産業界からもその成果に対する期待は高まっており、GSCの責務はますます大きくなっています。  GSCは新センター長就任と第2期計画実施という節目にあたり、この講演会で過去5年間の研究成果を報告するとともに、国内外の第一人者の招待講演を交え、ゲノム科学研究の今後を展望します。
 講演会は5月24日(月)開催予定で、参加希望者の受付を4月23日(金)より開始します。GSCホームページ(http://www.gsc.riken.jp/five/)で申し込みを受け付けます。


1. ゲノム科学総合研究センター(GSC)について
 GSCはわが国における総合的なゲノム科学研究の中核拠点として1998年10月に設置され、和田昭允・前センター所長のもと、生命活動の基本であるゲノム(生命が持つ遺伝情報の全体)に焦点を当て、遺伝子、ゲノム、タンパク質およびそれらのネットワークの構造と機能の研究を、分子レベルから個体レベルまで総合的に進め、ヒトゲノム解読完了(2003年4月)の貢献、完全長cDNA※1バンクの整備、世界有数のタンパク質の立体構造解析(タンパク3000プロジェクト)、モデル動植物の変異体作成、バイオインフォマティクス研究など世界に先駆けた研究を推進し、国際的な研究成果をあげ、確固たる地位を確立してきました。
 昨年4月14日のヒトゲノム解読完了宣言後、米国はエンコード計画※2を推進し、わが国でもゲノムネットワークプロジェクト※3が開始されるなど国内外でゲノム科学研究の新たなる総合的な推進が始められています。
 GSCはそうした背景の下、HUGO(ヒトゲノム国際機構:Human Genome Organization)会長である榊佳之・新センター長が就任し、柔軟な研究体制とこれまで蓄積してきた研究資源を基盤に、次の5年間として第2期計画「生命戦略の解明研究」を開始しています。
 第2期計画を推進するのにあたり、効率的に研究センター全体を運営するために、研究センターの共通性の高い研究基盤であるシークエンス※4技術や情報インフラを「ゲノム基盤施設」という組織において集約して整備するなど新たな取り組みを行っています。
 また、GSCは、今後も国際チンパンジーY染色体コンソーシアム(The International Chimpanzee Chromosome Y Consortium)、タンパク3000プロジェクト、ゲノムネットワークプロジェクトを始めとする国内外のプロジェクト研究を積極的に推進していきます。


2. 第2期計画「生命戦略の解明研究」
 従来の生命科学の多くは各々個別的に研究が実施され、それらの研究成果をつなげていくという研究の取り組みに対して充分ではありませんでした。GSCは、これまでの5年間で各分野で網羅的な研究を行ってきましたが、それらをつなげることを本格化させる第2期計画を実施するにあたって、生命が多様な環境で繁栄するために獲得した戦略(自然の巧妙なメカニズム)"生命の戦略"の解明を研究センター全体の大きな目標として位置付けています。
 これまで実施してきたDNA(ゲノム、遺伝子)、タンパク質の構造と機能に関する知見の集積や世界的に有数のシークエンスライン・大型NMR施設とそれを高度のレベルで駆使する研究者・技術者集団を有するライフサイエンスの国際的拠点としての実績を踏まえ、生命の体内においてのDNA・RNA・タンパク質といった分子レベルの現象から、それらの分子の相互作用を通じて起こる表現形質や・疾患等の個体レベルの現象に至るプロセスに隠されている生命戦略を解明するための基盤とその応用展開のための基盤を構築します。
 ヒトゲノムの解読が完了し、また各国においても多くの生物種のゲノムが解読され、シークエンスデータが集積されています。これらのデータは、世界中で個別に研究されている脳や免疫などの生命現象や疾患などの研究を発展させる基盤となります。生命戦略の解明研究は、こうした近年の生命現象情報の飛躍的な蓄積の背景のもと、展開するもので、解明すべき戦略と、その応用をターゲットにした研究を展開します。これらの成果として基礎科学への貢献はもとより、ゲノム創薬、診断治療薬、育種、品種改良、バイオレメディエーション等の研究が飛躍的に進み、医療・福祉・食料・環境等に関連した産業への大きな寄与が期待されます。具体的には、以下の項目をターゲットとして定め、研究を展開します。

1)解明すべき戦略(生命戦略)
(1)分子要素(DNA,タンパク質)における【構造・機能相関の戦略】
(2)物理・化学回路の【機能分子要素間相互作用ゲノムネットワーク構成の戦略】
(3)ゲノムとフェノーム(表現型の総体)を結ぶ【ミクロ・マクロに跨る構造・機能システム化の戦略】
(4)フェノームの【生存と適応の戦略】
(5)ゲノム間相互作用による【ゲノム集団生存の戦略】
2)『生命戦略』を巡る開発・応用展開
(1)健康・医療と環境の指針となる【生命活動の防御、安定化、健全化の戦略】
(2)生命戦略に触発された新産業【ナノ・エンジニアリング開発の戦略】
(3)生命戦略を対象とした新産業【戦略解明のための方法論の開発】


3. 5周年記念講演会"ゲノム科学の今後の展望"
 ヒトゲノム解読完了は、配列の判明というゲノム科学の第一段階にすぎず、現在はゲノムやタンパク質などの機能を探る段階に入っています。人が病気なり、また老化していくプロセス全体について、ゲノムを通じて、どんな遺伝子やタンパク質がどう働き、支配しているのかなどが研究のテーマが重要になってきています。
 このように、ゲノム科学研究が新たな展開を迎えていることにあたって、GSCでは、ゲノム科学研究の今後の展望を考える有意義な機会の場として記念講演会を開催し、学術講演と記念講演を行います。記念講演会では、GSCにおけるこれまでの研究成果を報告すると共に、内外の識者による招待講演をまじえ、ゲノム科学研究の最先端や新たな展開を紹介し、活発な意見交換を行います。

2004年5月24日(月) 9:30−18:00
経団連ホール 東京都千代田区大手町1−9−4
プログラム (午前)学術講演会〜過去5年間の歩みをふりかえって〜
(午後)記念講演会
招待講演者 大石 道夫(財団法人かずさDNA研究所 所長)
堀田 凱樹(大学共用利用機関法人 情報・システム研究機構 機構長)
ティム・ハッバード(英国・ウェルカムトラスト・サンガー研究所)

1)学術講演 〜5年間の歩みをふりかえって〜
9:30 - 9:40 開会挨拶



和田 昭允 (前センター所長、現:横浜こども科学館館長)
9:40 - 10:10 林ア 良英 (遺伝子構造・機能研究グループプロジェクトディレクター)
10:10 - 10:40 横山 茂之 (タンパク質構造・機能研究グループプロジェクトディレクター)
10:40 - 11:10 榊  佳之 (センター長、ゲノム構造情報研究グループ 前プロジェクトディレクター)
11:20 - 11:50 篠崎 一雄 (植物機能情報研究グループプロジェクトディレクター)
11:50 - 12:20 城石 俊彦 (動物機能情報研究グループプロジェクトディレクター)
12:20 - 12:50 小長谷 明彦 (ゲノム情報科学研究グループプロジェクトディレクター)

2)記念講演
13:50 - 14:00 挨拶 野依 良治(理化学研究所理事長)
14:00 - 14:20 祝辞
14:20 - 15:00 「ゲノムへの道−GSC5年の足跡」
  和田 昭允(前センター所長、現:横浜こども科学館館長)
15:00 - 15:40 「生命科学の統一論を生み出すためのゲノム科学」
  堀田 凱樹(大学共用利用機関法人 情報・システム研究機構 機構長)
15:50 - 16:30 「ゲノム科学の展開と社会への貢献」
  ティム・ハッバード(英国・ウェルカムトラスト・サンガー研究所)
16:30 - 17:10 「我が国におけるゲノムDNA研究の将来展望」
  大石 道夫 (財団法人かずさDNA研究所理事長)
17:10 - 17:50 「ポストシーケンスのゲノム科学とGSCの役割〜要素の解明からシステムの解明へ〜」
  榊  佳之  (センター長)

3)その他
・GSC全体とGSC各研究グループの紹介のポスター展示。
・記念講演会要旨集配布。

4)講演会の参加申し込み
GSCホームページ(http://www.gsc.riken.jp/five/)より事前申し込みします。
・ 定員450名。
・ 参加費無料。


(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所 横浜研究推進部
岩野 恵子

Tel: 045-503-9117 / Fax: 045-503-9113
Mail: gscsympo@gsc.riken.jp
(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


<補足説明>
※1 完全長cDNA
cDNAとは、ゲノムDNAの中から不要な配列を除き、タンパク質をコードする配列のみに整理された遺伝情報物質であるmRNAを鋳型にして作られたDNAのことである。完全長cDNAは、断片cDNAと異なり、タンパク質を合成するための設計情報をすべて有しているため、タンパク質を合成することができる。この完全長cDNAを効率的に合成するためには、非常に高い技術が必要とされ、わが国が世界に先んじている。
※2 エンコード計画
米国はポストゲノム戦略として新しいプロジェクトを複数立ち上げ、ゲノム機能解析に集中的に研究者や研究予算を投入した。そのうちのひとつが、米国NIH(衛生研究所)の国立ヒトゲノム解析研究所(National Human Genome Research Institute)によるエンコード(ENCODE)計画である。2003年9月から正式に開始され、エンコード計画の"ENCODE"とは、Encyclopedia of Human DNA Elements(ヒトDNAの百科事典)の頭文字から命名された。完全解読されたヒトゲノム上に、遺伝子の機能を担う領域を全て書き込んで、全ヒトゲノム(DNA)の百科事典を作成するという計画である。
※3 ゲノムネットワークプロジェクト
多くの遺伝子の活動により実現されている生命活動を遺伝子のネットワークとして捉え、複雑な生命現象と疾患などに関わる遺伝子のネットワークを解明することを目標にしたプロジェクト。
※4 シークエンス
シークエンスとは、核酸、タンパク質等において、それを構成するモノマーのつながっている順番(配列)のこと、またはその配列を解読すること。

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