プレスリリース 独立行政法人 理化学研究所
サーバークライアント型細胞シミュレーター「E-Cell2D」の公開
平成16年4月5日
 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、平成16年4月6日より、ITBLプロジェクト※1のポータル公開実験※2として、サーバークライアント型細胞シミュレーター「E-Cell2D」(Distributed E-Cell2)を公開します。ITBLプロジェクトのウェブサイトで公開し、URLは「http://www.itbl.riken.jp/」です。
 「E-Cell」※3は、慶應義塾大学先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)の冨田勝教授研究室が中心になって開発してきた、細胞シミュレーション用のフリーソフトウェア※4です。これまで、初代のE-Cell1、Windowsへの移植を可能にしたE-Cell2、新世代のE-Cell3を開発してきました。今回はこのうちのE-Cell2を、理研中央研究所・戎崎計算宇宙物理研究室(戎崎俊一主任研究員)と株式会社ベストシステムズ(西克也代表取締役)の開発チームが、サーバークライアント型に改良したものを公開します。利用者は、ウェブブラウザーとJavaプラグインを用意するだけで※5、理研にあるサーバー上で計算される細胞モデルを操作し見ることができます。公開はこの研究の一部で、E-Cell入門用のテストデータと、慶大の中山洋一講師が開発したヒト赤血球モデルのデモンストレーションを行います。
 現在、高校生向け教材「E-Cellで試す化学平衡の仕組み(仮題)」を開発中で、モデル自作環境等の整備を行っています。


1. E-Cell2Dについて
 様々な生物種のゲノム配列が続々と決定されていますが、生命を理解するのに、設計図であるゲノム配列を眺めるだけでは十分とは言えません。生命の営みは、生物の体の中で、様々な分子が協調して働くことで維持されているからです。
 E-Cellとは、生体内の複雑なネットワークを解明するための、基盤となるソフトウェアです。既存の主要モデルには、ヒト赤血球・細胞内ミトコンドリア・大腸菌の受容器官・酵母の細胞周期・神経細胞等があります。
 1996年に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスで始まったE-Cell プロジェクト(http://www.e-cell.org)には3つのブランチがあり、E-Cell1(GUI(Graphical User Interfaceの略で、グラフィックを多用するコンピュータシステムの操作感)をC++という言語で開発)とE-Cell3(GUIをPythonという言語で開発)については、慶應義塾大学先端生命科学研究所が主に開発を進めています。
 E-Cell2(GUIをJavaという言語で開発)は、E-Cell1と同等以上の環境を、種類の異なる複数のコンピュータオペレーティングシステム(OS)で実現することを目的とするプロジェクトです。今回は、 まずMS-Windows (2000/NT/98/XP)利用できるよう、開発が進められています。
 そのE-Cell2を、理化学研究所計算宇宙物理研究室(戎崎俊一主任)とベストシステムズグループ(西克也代表取締役)の開発チームが、「E-Cell2D」としてサーバークライアント型に改良しました。その目的は、インストールの手間を省き、OSによらずに動くことで、特に、教育、試用、デモンストレーションに有用です。
 表示画面は図1、仕組みは図2のとおりで、理研に設置された計算サーバー上で計算される細胞モデルを、利用者のコンピューターから操作・表示します。Webページを閲覧するためのアプリケーションソフトである「ブラウザ」に読み込まれて実行されるJavaという言語を用いたプログラム「Java applet」と、Javaによるシミュレーション・サーバとの間を、文書の論理構造を「タグ」と呼ばれる特別な文字列で表現するXML(eXtensible Markup Language)という言語でデータを表わし、ネットワーク上の異なるマシンで処理を実行するRPC(Remote Procedure Call)という通信方式が用いられています。
 「E-Cell2D」の開発で、細胞シミュレーションを利用する研究教育の普及の面での貢献が期待されます。また、高校生向け教材「E-Cellで試す化学平衡の仕組み(仮題)」を開発中で、モデル自作環境等の整備を行っています。


(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所
 中央研究所 戎崎計算宇宙物理研究室 
  主任研究員 戎崎 俊一

Tel: 048-467-9414
Fax: 048-467-4078

(E-Cell2Dの技術的問題について)

独立行政法人理化学研究所
 中央研究所 戎崎計算宇宙物理研究室 
  協力研究員 石川 直太

Tel: 048-467-9417
Fax: 048-467-4078
Mail: ecell2d@riken.jp

  株式会社ベストシステムズ

Tel: 029-860-7080
Fax: 029-860-7081
URL: http://www.bestsystems.co.jp/

(E-Cellプロジェクト全般について)

慶應義塾大学 先端生命科学研究所 渉外担当
  塩澤 明子

Tel: 0235-29-0800
Fax: 0235-29-0809
Mail: akiko@ttck.keio.ac.jp

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室

Tel: 048-467-9272
Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


<補足説明>
※1 ITBLプロジェクト
Information Technology Based Laboratory。国内研究機関の所有する計算資源(スパコン、ソフトウェア、データベース等)を大容量ネットワーク上で共有化して、高度なシミュレーションなどを行う仮想研究環境を構築する計画です。
※2 ITBLポータル公開実験
計算機シミュレーションを普及させるために、ITBLポータルでは、次の3つの機能を用意しています。
  • グループウェア機能
  • 計算サービス機能 (SX-6iおよびPCクラスタ)
  • アプリケーションのショールーム
※3 E-Cellプロジェクト
Linux版およびWindows版の細胞シミュレーターと、各種モデルが公開されています。URLは「http://www.e-cell.org/」。
※4 フリーソフトウェア
単に無料であるだけではなく、ソースファイルが公開され、誰でも改良と再配布をできるソフトウェアです。
※5 E-Cell2Dの実行環境
ウェブブラウザーと、バージョン1.2以上のJavaプラグインが必要です。Microsoft Windows 2000、Vine Linux 2.6、MacOS/Xで動作確認済です。MacOS/9では、Javaプラグインのバージョンが古いために動作しません。



Web browser
World Wide Web (WWW)サービスを利用するためのアプリケーションソフトウェアで、インタネットエクスプローラー、ネットスケープナビゲーター、オペラ、サファリ等が有名である。
Java Plug-in
一般的に、ウェブブラウザーに機能を追加するプログラムを「プラグイン」と呼び、後述のJavaアプレットを実行するためのプラグインをJavaプラグインと呼ぶ。
Java applet
Java言語で記述され、WWWのサーバーからクライアントに読み込まれて実行される、コンピュータープログラムである。
XML-RPC (eXtensible Markup Language − Remote Procedure Call)
あるコンピューターからネットワーク経由で別のコンピューターに処理を依頼する方法のひとつを遠隔手続き呼び出し(RPC)といい、その中でもデータをXML言語で表現するものをXML-RPCという。
Shepherd daemon by Python
利用者や他のプログラムからの要求を待機して処理するプログラムを一般的にデーモンといい、ここでは、利用者がITBLポータルサイトのウェブページで「E-Cell2D」をクリックすると、シミュレーションサーバーを起動するデーモンを「シェパード(羊飼い)」デーモンと呼び、パイソン言語で開発した。
Simulation Server by Java
計算サーバー側で、利用者のコンピューターとの間の通信を管理するプログラムで、Java言語で開発した。
JNI (Java Native Interface)
Java言語で書かれたプログラムとC/C++言語で書かれたプログラムを結合する技術である。
Simulation Engine
細胞シミュレーションを行なう本体のプログラムで、E-Cell2 for Windowsのシミュレーションエンジンを元に、C++言語で開発した。
WWW Server
ウェブサービスを提供するプログラムで、今回はフリーソフトウェアの「アパッチ」を利用している。

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