|
研究グループはまず小胞体ストレスに曝された細胞を蛍光によって見分ける実験系の確立を目指しました。そこでXBP1遺伝子と蛍光タンパク質をコードするVenus遺伝子とを連結した人工遺伝子(ERAI遺伝子とよんでいる)を作製しました。このERAI遺伝子は本来のXBP1遺伝子と同様に小胞体ストレスを感知したIRE1にスプライシングされ、活性化されるようにデザインされています(図3)。遺伝子組換え技術を用いて、このERAI遺伝子を培養細胞に導入すると、小胞体ストレスによって細胞を光らすことができました。次に、このERAI遺伝子をマウス受精卵に注入し、トランスジェニックマウス、つまりERAIマウス、を作製しました。培養細胞を用いた実験と同様に、人為的な小胞体ストレスをこのERAIマウスに与えた場合、腎臓をはじめとする多くの臓器・組織からVenus由来の蛍光が観察されました(図4)。この結果
は当初の目的である「小胞体ストレスに曝された細胞を蛍光によって見分ける実験系の確立」を動物個体レベルで達成したことを意味しています。
このERAIマウスは動物個体の生理レベルでの小胞体ストレスに関する新たな知見も与えてくれました。生後16日以降、このERAIマウスの膵臓は人為的な小胞体ストレスがなくても強い蛍光を発します。また、少なくとも25週齢を過ぎたERAIマウスの筋肉ではやはり人為的な小胞体ストレスがなくても強い蛍光を発します。通
常、小胞体ストレスは分泌タンパク質や膜タンパク質の合成が盛んな組織で生じると考えられていました。その意味では、分泌タンパク質であるホルモンや消化酵素を産生する膵臓での小胞体ストレスは当然のように思われますが、ある週齢を境にした小胞体ストレスの発生は知られていませんでした。メカニズムの解明については今後の課題になりますが、わたしたちの発見は膵臓の成熟や筋肉の老化などと小胞体ストレスになんらかの関係があることを示しているのかもしれません。
|