プレスリリース 独立行政法人 理化学研究所
SLC22A4遺伝子とRUNX1遺伝子が関節リウマチと関連
平成15年11月27日
 独立行政法人理化学研究所 (野依良治理事長)は、一遺伝子多型(以下、SNP=single nucleotide polymorphism)を用いたホールゲノム疾患関連遺伝子解析※1の一環として、841人の関節リウマチ(以下、RA=Rheumatoid Arthritis)患者と658人のRAでない被験者とを比較(ケースコントロール関連解析※2)することによって、SLC22A4(有機陽イオン輸送体)※3遺伝子がRAの関連遺伝子の1つであると同定しました。また、RUNX1(転写制御因子)※4遺伝子がその作用を介してSLC22A4に関連していることがわかりました。これらの研究成果は理研横浜研究所遺伝子多型研究センター(豊島久真男センター長)関節リウマチ関連遺伝子研究チーム(山本一彦チームリーダー)の徳廣臣哉共同研究員、山田亮研究員らと三共株式会社(古川秀比古バイオメディカル研究所 副所長)によるものです。
 本研究成果は、米国の科学雑誌『Nature Genetics』12月号に掲載されます。


1. 背 景
 RAは日本を含む全世界で0.5−1%の罹患率をもつ疾患で、全身の関節が腫れて痛み、関節の破壊をもたらす自己免疫疾患の1つです。RAの原因は未解明の部分が多く、原因の解明とその原因に基づいた治療の開発が待たれている疾患です。同研究チームは平成15年6月にペプチジルアルギニンデイミナーゼタイプ4※5をRAの関連遺伝子として同定しましたが、今回それに引き続き、SLC22A4遺伝子がRAの関連遺伝子であることを同定しました。さらに、SLC22A4遺伝子の発現を制御するRUNX1遺伝子もRAに関連している可能性を示唆しました。


2. 研究成果
 SLC22A4は、これまでに、生体内の小分子を輸送する機能を持つことが知られています。同研究チームは、ケースコントロール関連解析の手法を用いて、この遺伝子がRAに関連することを明らかにしました(図1)。SLC22A4の詳しい機能は未解明のままですが、その分子が関節の炎症に重要な役割を果たしている白血球に発現することを明らかにしました。また、SLC22A4遺伝子のイントロン1※6に存在するSNP上に、RUNX1という転写制御因子が結合することがわかりました。RUNX1の結合の強さはSNPのタイプによって異なり、その結果、SLC22A4の発現も異なります。このSLC22A4の発現量の違いがRAへのかかりやすさの違いをもたらすと考えられます(図2)。


3. 研究成果の意義
 RAをはじめとする複合遺伝性疾患では、このように複数の遺伝子が相互に関係しながら疾患へのかかりやすさを決定すると考えられていますが、その実例が示されたことはほとんどなく、今後の疾患関連遺伝子解析研究への重要な研究成果であると考えられます。今後、SLC22A4の生理的な機能を解析することによって、SLC22A4がRAのかかりやすさに影響を与える機序がより詳しく解明され、RAの病因解明が進み、新規治療法の開発へと結びつくことが期待されます。
 さらに、今回RAとの関連が示唆されたRUNX1が、乾癬(かんせん)(炎症性自己免疫性皮膚疾患)という病気へのかかりやすさに影響しているという報告も、同時になされました。このことは、RUNX1が自己免疫疾患の発症に重要な役割を果たしている可能性があることを意味する興味深い発見です。


(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所

横浜研究所 遺伝子多型研究センター
 関節リウマチ関連遺伝子研究チーム
チームリーダー 山本 一彦
研究員     山田  亮
Tel: 045-503-9569
Fax: 045-503-9590
(連絡先)

独立行政法人理化学研究所 広報室

Tel: 048-467-9272
Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


<補足説明>
※1 ホールゲノム疾患関連遺伝子解析
ヒトゲノム30億塩基対のすべてを対象として疾患に関連する遺伝子を探索する研究。
※2 ケースコントロール関連解析
関節リウマチ(RA)に関する場合、RAの方とRAでない方とでSNPの型に差があるかどうかを比較する解析方法である。
※3 SLC22A4(有機陽イオン輸送体)
イオン化して陽イオンとなった生体内にある小分子(有機物)を細胞の膜構造の内側から外側へ、または外側から内側へと輸送する機能を持つタンパク質。(図3)
※4 RUNX1(転写制御因子)
遺伝子の発現を制御する機能をもつ分子(転写制御因子)の一つ。主に、白血球に特有な遺伝子の発現制御にかかわり、白血球の分化・増殖に関わっていると考えられている。急性骨髄性白血病の原因遺伝子としても知られている。また、全身性ループスエリテマトーデス、乾癬(かんせん)という自己免疫疾患に関連するとの報告がある。
※5 ペプチジルアルギニンデイミナーゼタイプ4
ペプチジルアルギニンデイミナーゼとはタンパク質中にあるアミノ酸の1つであるアルギニンをシトルリンに換える酵素。ヒトでは4タイプが知られ、それらの遺伝子のすべてが、1番染色体の1p36という領域にならんで存在している。
※6 イントロン1
遺伝子は、複数のエクソンとその間にはさまれるイントロンとからなる。遺伝子のエクソン部分はDNAからmRNAに転写されるが、イントロンの部分は、mRNAに転写されない。イントロン1とは、1番先頭のエクソン(エクソン1)と次のエクソン(エクソン2)とにはさまれた領域のことである。




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