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理化学研究所(小林俊一理事長)は、ショウジョウバエを用いてヒト神経変性疾患の発症メカニズムを遺伝学的に解明し、新たな治療法を開発する標的分子を明らかにすることに世界で初めて成功しました。脳科学総合研究センター(甘利俊一センター長)細胞修復機構研究チームの三浦正幸・チームリーダー(現:東京大学薬学部)、嘉糠洋陸・基礎科学特別研究員(現:スタンフォード大学)らによる研究成果です。
ハンチントン舞踏病に代表されるポリグルタミン病(※1)の多くは、ポリグルタミン鎖(グルタミン酸が連続して連なったタンパク質を作る遺伝子の塩基配列の繰り返し)が異常に伸長することによって引き起こされ、高齢になってから発症する晩発性の神経変性疾患です。
研究グループでは、ショウジョウバエを用い、神経変性の主要要因である神経細胞死に関与する遺伝子群を網羅的に同定し、その中から、細胞の小胞体に存在して不良品のタンパク質を輸送する経路(チャネル)に関係する遺伝子Sec61αを突き止めました。そして、この経路の働きを活性化させると細胞内に不良品のタンパク質がたまり、神経細胞死を引き起こしていくことも解明しました。さらに、この不良タンパク質の輸送経路の働きを弱めると、ショウジョウバエのハンチントン舞踏病モデルで観察される晩発性の神経変性を回復させることができました。
この成果は、従来の神経細胞死発症のメカニズムとは異なった新しいメカニズムを解明したものです。ポリグルタミン病の発症機構の研究に新たな道を切り拓くだけでなく、プリオン病を含む他の神経変性疾患の発症機構解明や治療法の開発に将来大きく貢献するものと期待されます。
本研究成果は、米国の学術専門誌『Proceedings of
the National Academy of Sciences of the United
States of America:
PNAS』(米国科学アカデミー紀要)のウェブサイト(9月15日付、日本時間9月16日)でオンライン発表されます。
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