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理化学研究所(小林俊一理事長)は、発達期のネコ、マウス視覚系において視覚機能同様に睡眠もまた視覚経験により発達することを発見し、かつその睡眠の可塑性※1は生後の限られた時期(臨界期)に生じることを世界で初めて示しました。理研脳科学総合研究センター(甘利俊一センター長)、神経回路発達研究チーム ヘンシュ貴雄グループディレクター兼チームリーダーおよび宮本浩行・片桐大之研究員らによる研究成果です。
記憶の定着に睡眠は不可欠の役割を担っていることが従来から示唆されてきましたが、当研究グループは逆に記憶・学習などに関わる覚醒時の経験がどのように睡眠に影響するかを研究が進んでいる視覚系で明らかにしました。生後間もない発達期の動物を完全な暗室で育て視覚経験を妨げると、成熟した後も視覚皮質において特異的に睡眠中の脳活動(脳波)が顕著に低下することを見出しました。成熟動物から視覚経験を奪っても睡眠に変化はなく、マウスでは生後1〜2ヶ月に睡眠の可塑性の臨界期が存在することが分かりました。さらに遺伝子欠損マウスを用い、この可塑性はNMDA型グルタミン酸受容体の活性化を介した分子メカニズムに基づくことを見出しました。
今回の発見はシナプス可塑性を通じて睡眠と視覚システムを強く結びつけ、依然謎の多い記憶・学習と睡眠の役割を神経回路のレベルで解き明かす上で糸口となるものです。本研究は若い脳の発達と睡眠との関係の基礎的理解から睡眠障害をもつ患者の医学的診断など広く貢献することが期待されます。
本研究成果は、米国の科学雑誌『Nature
Neuroscience』のウェブサイト上のアドバンス・オンライン・パブリケーション(AOP・5月19日付)に発表されるとともに、6月号に掲載されます。
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