Press Release

理化学研究所
平成14年11月20日

タンパク質の構造推定を行うシステムを構築
− タンパク質の網羅的解析を目指し構造推定研究をスタート −

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 理化学研究所(小林俊一理事長)はこのたび、文部科学省が推進するタンパク3000プロジェクトにより構造決定したタンパク質から、類似のタンパク質の構造を推定(モデリング)できるシステムを構築しました。システムの構築あたっては、北里大学の梅山秀明教授を客員主幹研究員として招聘。理研ゲノム科学総合研究センタータンパク質構造・機能研究グループ内に世界最先端の技術を用いたシステムが置かれ、構造推定研究を行います。
 理研では、国が推進するタンパク3000プロジェクトの一環として、タンパク質基本構造の網羅的解析プログラムを実施しております。このプロジェクトにおける構造解析をさらに発展させるためには、解析されたタンパクに基づいて構造推定を行うことは重要な手段であり、これらモデリングされたタンパク質立体構造の情報は、医薬品、農薬、食品、工業的に有用なタンパク質開発のシードとなることが期待されます。

 

1.背景

 理化学研究所(理研)では、国が推進するタンパク3000プロジェクトの一環として、横浜、播磨、和光本所の3カ所の研究機能を結集して、「タンパク質構造・機能の網羅的解析プログラム(横山茂之総括責任者)」を国からの受託研究として開始しています。今後5年間にタンパク質の立体構造および機能を2,500個解析する計画で研究を実施しています。このタンパク質の構造・機能解析研究は、国際的にも注目されている分野であり、現在、ISGO(国際構造ゲノム科学機構)が組織され、国際協調のもとに、各国が研究の展開に力を入れています。

 

2.ホモロジーモデリングシステムの構築

 タンパク質の立体構造は、NMR(核磁気共鳴装置)やX線結晶構造解析によって、一つ一つ決定されます。この実験的に決定された立体構造を利用すれば、類似のタンパク質の立体構造をシミュレーションにより推定することができます。すなわち、タンパク質の基本単位である20種のアミノ酸の並び方で、その類似性(シークエンスホモロジー)を規定し、このシークエンスホモロジーが30%以上のタンパク質について、コンピュータシュミレーションによってホモロジーモデリング(in silico homology modeling)を行うことが可能となります。これによって、実際に解析されたタンパク質の研究成果をもとに、さらに網羅的なタンパク質の構造・機能研究を行うことが可能となります。
 理研では、タンパク質の網羅的な解析を目指して着手した2,500個のタンパク質解析の成果をさらに発展させるため、この分野の第一人者である、北里大学薬学部の梅山秀明教授を客員主幹研究員に迎えました。梅山客員主幹研究員らは、コンピュータシュミレーションによる自動ホモロジーモデリングを実施するため、世界最先端の技術を用いたホモロジーモデリングシステム(gene FAMS)を開発しました。このシステムを、タンパク3000プロジェクトにおいて理研が決定した構造座標に適用することで、さらなるタンパク質の大規模モデリング研究が可能となります。これにより解析したタンパク質の構造情報の有効活用につながります。

 

3.モデル情報の有用性

 モデリングされたタンパク質立体構造の情報は、医薬品、農薬、食品など、工業的に有用なタンパク質開発のシードとなることが期待されます。このため理研では、タンパク質に結合する医薬品の候補となる低分子化合物を、ハイスループットコンピュータスクリーニング(in silico screening)によって推定する研究を実施しています。また、gene FAMSシステムを利用して計算されたホモロジーモデリングタンパク質の三次元座標は、FAMS3000BASEというデーターベースに集積され、in silico screeningされた候補低分子化合物座標は、その標的タンパク質と一緒にFAMS3000 ligand BASEとしてデーターベース化されます。これらのモデリングされたタンパク質情報やデーターベースを活用することにより、将来的には、有用なタンパク質を広範囲に解析することが可能となると考えられます。さらに、解析データをもとに、疾患治療や医薬品創製に結びつくタンパク質の特許化を効率的に促進することが可能となります。また理研では、これらの研究成果をもとに、産業界との広い連携も計画しています。


 

(問い合わせ先)

理化学研究所 横浜研究所

ゲノム科学総合研究センター

タンパク質構造・機能研究グループ

副グループディレクター

廣田  洋

TEL:045-503-9211

FAX:045-503-9210

横浜研究所 研究推進部

丸山 亮介

TEL:045-503-9121

FAX:045-503-9113

(報道担当)

理化学研究所 広報室

嶋田 庸嗣

TEL:048-467-9271

FAX:048-462-4715



補足説明

ハイスループットコンピュータスクリーニング(in silico screening)

タンパク質への結合小分子などを、計算機によって高速に検索する手法