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細胞生物学の研究分野では、生きた細胞を標識するのに、たとえばオワンクラゲ由来のGFP(Green
Fluorescent
Protein)のような蛍光タンパク質が用いられています。蛍光タンパク質は、自ら発色団※1を形成することができるために、遺伝子を導入するだけで細胞を光らせることができます。しかし、複雑な細胞集団の中で、任意の時期に任意の細胞を標識することはできません。
自己複製および多分化機能を有する幹細胞に由来する細胞は、分裂を経て、さらに回りの環境の影響を受けながら分化、移動し、さまざまな機能を発揮できるようになります。その過程を詳細に解析するためには、ある特定の時期に特定の細胞をマークして追跡する必要があります。しかしながら、現在用いられている技術の一つであるウイルスベクターを用いたGFP導入などは、確率的な要素が強く、マーキングの時間的空間的な精度は十分のものではありません。また、脳神経系の組織の中で、神経細胞同士は長い突起(軸索と樹状突起)を伸ばして連結し、神経回路網を形成しています。このような回路網の仕組みを解析するには、特定の神経細胞の輪郭をトレースすることが必要です。ところが突起が非常に複雑に絡みあっているために、通常の光学的観察ではまず不可能です。従来は、注目する神経細胞にガラス電極を刺して蛍光色素を注入することで、その細胞の全体像をつかんでいましたが、より簡単で非侵襲的な技術が求められてきています。
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