|
理化学研究所(小林俊一理事長)は、科学技術振興事業団(JST)および東京大学理学部と共同で、細胞外から細胞内への情報伝達にかかわるタンパク質の立体構造を原子レベルで決定し、新しい分子メカニズムを解明することに初めて成功しました。理研横浜研究所ゲノム科学総合研究センター(和田昭允センター所長)タンパク質構造・機能研究グループの横山茂之プロジェクトディレクターらの研究グループによる成果です。
細胞膜を横切る情報伝達のプロセスは、複雑な細胞情報処理システムの最初のステップであり、この情報伝達をつかさどるタンパクが受容体膜タンパク質です。この受容体を代表するものが「EGF(上皮細胞成長因子)受容体」であり、情報因子であるEGFがEGF受容体の細胞外領域に結合することによって、その刺激情報が細胞内に伝達されます。研究グループでは、EGFが結合したEGF受容体細胞外領域の結晶構造を、大型放射光施設SPring−8の共用ビームラインを用いて解析しました。その結果、EGF受容体細胞外領域の全体がC字型の配向をとり、C字型の背中から伸びたアーム様構造によってお互いをつかまえるように2量化していることが明らかとなりました。
EGF受容体は、わが国で推進している「タンパク3000プロジェクト」として解析してゆくべき重要なタンパク質です。今回、EGF受容体の活性化メカニズムが解明されたことは、細胞外から細胞内への情報伝達機構を解明する上で重要な知見を与えるだけでなく、EGF受容体ファミリーのかかわる悪性腫瘍などの新たな治療法の開発につながるものと期待されます。
本研究はJSTの創造科学推進事業(ERATO)の「横山情報分子プロジェクト(総括責任者:横山茂之、平成13年9月終了)」の一環として開始され、理研ゲノム科学総合研究センタータンパク質構造・機能研究グループで成し遂げられました。成果の詳細は、米国の学術誌『Cell』9月20日号に掲載されます。
|