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理化学研究所(小林俊一理事長)は、脊椎(せきつい)動物の進化における顎(あご)の獲得において、ある同じ遺伝子が、胚の発生時に、それまでとは異なる場所に働きかけて顎を形成させるようになったことを世界で初めて明らかにしました。岡山大学理学部、新潟大学医学部の協力のもと、理研神戸研究所発生・再生科学総合研究センター(竹市雅俊センター長)形態進化研究チームの倉谷
滋チームリーダーらの研究チームによって得られた成果です。
原始的な脊椎動物は顎を持っておらず、脊椎動物の顎は、進化により二次的に獲得されたと考えられています。獲得の過程を探るためには、現在生きている顎を持たない脊椎動物の一つ、ヤツメウナギの胚発生を理解することが近道です。研究グループでは、顎を持つ脊椎動物において顎の構造(前後軸)を決定する遺伝子をヤツメウナギから単離し、その発現パターンと発現機構を調べました。その結果、ヤツメウナギ幼生の口(上唇と下唇)の発生が、顎を持つ脊椎動物の上顎と下顎の発生と同じ機構になっていることが分かりました。しかしながら発生パターンの分析から、それらは別の細胞群によって構成されており、同じ遺伝子が別の場所に働きかけて、顎という新しい構造を作りあげていると考えられます。
進化において、真に新しい形態(進化的新規形態)は、祖先から受け継がれてきた従来の形態と相同ではない、新しいパターンとしてできあがります。その背景には、それまで働いていた遺伝子が場所を変えて、新しい構造を作る働きをするという「異所性:ヘテロトピー」があることが理論的には言われていました。本研究成果は、まさにその数少ない実例の一つとして、ヘテロトピーによる新規形態の進化の証拠を示したものです。
本成果は、米国の科学雑誌『Science』(5月17日号)に掲載されます。
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