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1)
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腹側化シグナルであるIP3-Ca2+シグナル伝達系の下流で働く分子を同定することを目的に、Cn/NF-AT経路が腹側化シグナルとして機能するかを検討しました。転写調整因子NF-ATを阻害した表現型は、IP3受容体を阻害した場合と同様に背側化の特徴的な表現型である異所性の体軸(二次軸)が形成されました(図1- )。さらに、NF-ATを過剰に発現(活性化)させると、背側(神経管など)が消失します(図2)。この結果から、転写調整因子NF-ATが腹側化シグナルとして作用していることが分かりました。
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2)
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IP3-Ca2+シグナル伝達系とCn/NF-AT経路との関係を調べるため、IP3受容体の阻害によって二次軸が形成された個体に対して、活性化させた転写調整因子NF-ATを共発現させたところ、二次軸が消失し、個体の形状が回復しました(図3)。このことは、IP3-Ca2+シグナル伝達系よりも、Cn/NF-AT経路が下流にあることを意味しています。
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3)
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発生初期の分泌性細胞間シグナルの1つであるWntは、初期発生や形態形成過程で生じる細胞間相互作用を仲介する物質(糖タンパク質)の一つです。Wnt経路には現在のところその機能から二つのグループ、「背側化活性を持つWnt/β-catenin経路」と、「Gタンパク質を介してCa2+動員を起こすとされるWnt/Ca2+経路」の二つに分けられます。このWnt/Ca2+経路とNF-ATとの関係を解析したところ、“Wnt/β-catenin経路の活性を抑制する点”や、“得られる表現型が酷似している点”、さらに“Wnt/Ca2+経路は細胞内Ca2動員を起こす点”などから、Wnt/Ca2+経路は、Cn/NF-AT経路の上流にあることが予想されます。そこで、Wnt/Ca2+経路が直接NF-ATを活性化させるか否かを検討したところ、培養細胞において“Wnt/Ca2+経路がNF-ATに依存的な転写を活性化したこと”や、“NF-ATの核内移行を促進したこと”などから、Wnt/Ca2+経路がCn/NF-AT経路を活性化させる上流経路であることが強く示唆されました。
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4)
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最後にWnt/β-catenin経路と転写調整因子NF-ATとの関係を調べました。NF-ATを阻害すると、背側化シグナルであるWnt/β-catenin経路に特異的な標的遺伝子産物であるXnr3、
siamoisが誘導されました。すなわち、NF-AT経路の抑制がWnt/β-catenin経路を活性化したことを意味しています。そこでWnt/β-catenin経路との作用点がどこであるかを、不活性化したNF-ATとWnt/β-catenin経路を抑制する方向に働く“負の調節因子(frzb,
顕性不活性型dsh、Glycogen Synthase Kinase
3β [GSK3-β]、顕性不活性型T-cell
Factor 3
[Tcf3])”との共発現により解析しました(図4)。NF-AT阻害によるsiamois、Xnr3の発現誘導は、GSK3βおよび顕性不活性型Tcf3によって消失していることから、NF-AT経路はWnt/β-catenin経路を少なくともβ-cateninより上流、dshより下流で負に制御していると考えられます。
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