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理化学研究所(小林俊一理事長)は、金属表面に吸着した分子の内部振動を励起することによって、分子が金属表面上を飛び移る現象が引き起こされることを世界で初めて捉えるとともに、その物理機構を理論的に証明しました。理研表面化学研究室(川合真紀主任研究員)の米田忠弘先任研究員、金有洙基礎科学特別研究員および、ドイツ・J lich研究所のBNJパーソン博士、富山大学工学部上羽弘教授による研究成果です。
ナノテクノロジーは、次世代を担う技術として期待されており、その発展に必須な要素技術の一つに、分子の動的な運動制御があります。本研究では、走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、金属であるパラジウム(Pd)上に吸着させた一酸化炭素(CO)分子にトンネル電子を注入し、内部振動(CO伸縮振動)を励起させることによって、金属表面上を移動させることに成功しました。さらに、銅(Cu)表面では、吸着分子との結合力が弱いため移動が起きやすいと考えられますが、実際には内部振動が励起されても、移動エネルギーに有効に伝達されず、分子の移動が起こらないことを理論的に明らかにしました。
本技術を用いて、CO分子が一次元的に並んだ鎖状の構造体を励起させると、分子ビリヤードのように集団で移動させることができるため、分子移動によるスイッチングの構築も夢ではなく、分子コンピューティングへ※1の可能性を拓くことになります。本研究成果は、米国の科学雑誌『Science』(3月15日号)に掲載されます。
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