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理研有機金属化学研究室の一つの大きな成果に、二重結合が3つ並んだ構造を持つ「ブタトリエン」化合物の簡便な合成法の発見があります。本合成法は、テルニウムという金属錯体の触媒を用いて、単純な分子からブタトリエンのみを容易に合成できます。それまで、「ブタトリエン」の合成においては、しばしば目的外の生成物が反応中に混ざるため、合成できる構造が限られていました。それゆえ、その性質はほとんど知られておらず、化学反応において特異な性質を示すことが期待されています。
今回、この「ブタトリエン」を用いて遷移金属の反応を検討したところ非常に珍しい構造をもつ化合物が得られることが分かりました。研究グループでは、ジルコニウム金属の化合物である「ビスシクロペンタジエニルジルコニウム塩化物」を還元して得られる低原子価錯体と、「1,4二置換ブタトリエン」を温和(常温)な条件で反応させることにより、遷移金属が環の中に取り入れられた5員環の環状アルキンが非常に安定な形で生成することを見出しました。またこの分子は安定に単離することができるため、X線結晶構造解析という手段によって分子の実際の形、結合の距離などの詳細を明らかにすることに成功しました。その結果、この分子は扇形のような5角形をしており、ジルコニウム金属が扇の要にあって、4つの炭素原子が扇の周囲を形作っていることが分かりました。また炭素と炭素の間の距離から、三重結合をもつ分子であることも分かりました。
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