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血液凝固に関わる有形成分は赤血球 |
| 血液は、無形成分である“血しょう(タンパク質、各種凝固因子、塩類などを含む)”と、有形成分である“赤血球”、“白血球”、“血小板”とから構成されています。研究チームでは、まずこれらの成分のうち、血液凝固に関与する成分を特定しました。人工血管モデルと血液の流動性を計測するレオメーター※2を組み合わせた血流停滞をシミュレーションする計測系を用いて、全血液およびそれぞれの成分のみで血栓が生じる時間を比較したところ、血液凝固に関与する有形成分は、赤血球であることが分かりました。 |
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血栓形成には赤血球による第IX因子活性化が重要 |
| 血液を凝固させるメカニズムには、内因系反応※3と外因系反応※3の2つの異なった経路があります。凝固因子が一つ欠乏する血しょうに、赤血球のみを混ぜ入れた試料の凝固を測定した結果、内因系における第IX、第X因子が無い場合には、血流が停滞しても凝固が起こらなくなることが分かりました。さらに市販されている純粋な凝固因子を赤血球と接触させたときに、第IX、第X因子のどちらが活性化するかを生化学的に解析したところ、赤血球によって第IX因子のみが活性化することが発見されました。 |
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第IX因子を活性化させる酵素は「エラスターゼ」 |
| 第IX因子を活性化させる原因酵素(タンパク質)を赤血球膜から抽出しました。得られた酵素のN-末端アミノ酸配列を、理研物質基盤研究部生体分子解析室(瀧尾擴士室長)の協力を得て解析し、原因となる物質を探索しました。その結果、原因酵素が「エラスターゼ」であることを突き止めました。「エラスターゼ」は本来、赤血球膜には含まれない、もしくは含まれていても極微量であるといわれていましたが、「エラスターゼ」によって活性化する蛍光物質を用いて赤血球膜に存在することを確認しました。 |
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血流停滞および脱水は第IX因子の活性化を促進 |
| 人工血管とレオメーターを組み合わせた計測系により、第IX因子の活性化が引き起こされる状態をさらに詳しく検証した結果、血液の流れが速いときには活性化が起こらず、血流が停滞すると活性化が起こることが分かりました。また、脱水などによる赤血球数(ヘマトクリット)の増加は、第IX因子の活性化を促進することが分かりました。 |
以上のことから、赤血球膜に存在する「エラスターゼ」は、血流停滞による血栓形成のトリガー物質であることが確かめられました。さらに、第IX因子が内因系反応で活性化される際に第XI因子によって切断される部位と、「エラスターゼ」によって切断される部位とではわずかに異なっていることが分かりました。これは、血流停滞による血栓形成が、通常、知られている内因系反応のトリガー機構とは異なった系で引き起こされる独特のメカニズムであると考えられます。