Press Release

  理化学研究所
平成12年11月7日

バイオミメティックコントロール研究センター
一般公開について

プレス発表情報一覧


 


 

 理化学研究所 バイオミメティックコントロール研究センター(佐田登志夫センター長)は11月12日(日)、名古屋市守山区の研究施設を一般に公開します。生体を模倣したロボットのデモンストレーションを行うほか、複数の人の声を聞き分ける音源分離、運動制御に関わる神経細胞の顕微鏡観察など研究内容を分かりやすく紹介します。
 一般公開は、毎年11月に行われる名古屋市の科学技術推進月間「なごや・サイエンス・ひろば」の一環として実施するものです。同日には、当研究所を含む名古屋市志段味ヒューマンサイエンスパークの各施設(先端技術連携リサーチセンター、研究開発センター)の公開も行われます。


□一般公開

公開日時:平成12年11月12日(日) 10時〜16時
公開場所:名古屋市守山区大字下志段味字穴ヶ洞2271−130
       志段味サイエンスパーク研究開発センター内
        理化学研究所バイオミメティックコントロール研究センター
連絡先 :バイオミメティックコントロール研究センター研究推進室 
       電話:052−736−5850 FAX:052−736−5854

 

 

□ バイオミメティックコントロール研究について

 バイオミメティックコントロール研究は、当研究所のフロンティア研究システムの一環として計画されたもので、平成11年10月より名古屋市の協力のもとに推進しています。名古屋地域は、自動車・航空機製造や工作機械といった工業が盛んであり、また、ロボットを用いた自動工作技術や高度な制御技術に積極的な土壌があります。このような背景から当研究所の研究ポテンシャルと名古屋地域の研究ポテンシャルとの融合により、高等動物が長い期間を通じて獲得した精緻な運動機能を人工的に実現する生体模倣技術(バイオ・ミメティック)の確立を目指し、神経科学的な側面と工学的な側面から研究を行っています。
 バイオミメティックコントロール研究センターは現在、「運動回路網研究チーム」「運動遺伝子研究チーム」「生体ミメティックセンサー研究チーム」「制御系理論研究チーム」の4チームで構成されています。それぞれの研究チームの研究および公開内容については別紙を参照下さい。

  

 

 

(問い合わせ先)    

理化学研究所
バイオミメティックコントロール研究センター 
    研究推進室    畔柳 秀行
      TEL:052-736-5850 FAX:052-736-5854

    (報道担当)     
    広報室 嶋田 庸嗣
      TEL:048-467-9272  FAX:048-462-4715 


参考資料

運動回路網研究チーム

 

公開内容:「運動制御に関わる神経細胞の顕微鏡観察」

 大脳には、大脳皮質や大脳基底核などの、私達の精神活動や運動・行動にとって重要な部分があります。これらの異常は、精神分裂病やパーキンソン病といった、深刻な病気を引き起こすことが知られています。ヒトでは、皮質や基底核は脳の中でも大きな部位ですが、非常に小さな単位構造の繰り返しで構成されていることがわかっています。しかし、その単位構造の中での情報処理の仕組みについてはまだよくわかっていません。私達の研究室では、その内部の神経細胞の働きや神経回路の構造がどのようなものであるか、また、そのハードウェアを使って局所回路網がどのように動いているのかに興味をもって研究しています。
 今回の一般公開では、私達の研究室で実際に使用している研究材料として作成した一個の神経細胞の全体像を染め出したプレパラートを、実際に顕微鏡を使って、一般の参加者の方々に私たちの解説とともに一緒にみていただく予定です。普段は見る事のない(といっても、皆さんそれぞれ100億個余りご自分でお持ちですが)神経細胞に触れていただく貴重な経験となることを期待しています。

研究目的・研究概要:

 生体の運動を制御するのに重要な神経回路網としては、大脳皮質・大脳基底核・小脳がありますが、これらを運動制御のモデルに組み込むためには、個々の領域の構造と、その中での情報処理に関する知識が必要となります。本研究チームでは、大脳の中で運動制御に深く関係している大脳基底核等の内部回路の機能的解析を行うために、局所回路における神経細胞の機能的特徴・構造の解明、各神経細胞間の結合様式、神経結合状態の変化を生理学・形態学的な手法を用いて調べています。

運動遺伝子研究チーム

公開内容:「中枢神経系の損傷とGDNFの発現について(パネル展示)」

 私達の研究室では、脳や脊髄など中枢神経系を「壊す」ことにより、初期において細胞レベル・分子レベルでどのような現象が引き起こされるか研究を進めています。脊髄損傷の場合、これまでは事故の後、脊椎を保護し残った能力を最大限に伸ばすリハビリ療法に力点が置かれていました。しかし、ステロイドの一種であるメチルプレドニゾロンを損傷後8時間以内に大量投与すれば、出血に伴う脊髄の腫張や炎症を軽減することができ、運動・感覚機能の一部が維持されることが証明されました。メチルプレドニゾロンの分子レベルでの作用機序は明らかにされていませんが、今では脊髄損傷に対してより効果的な治療法の研究が進められています。従って、脊髄損傷に引き続いて起こる細胞死(アポトーシス)がどのようなメカニズムによるのか解明することが出来れば、より効果的な治療法が開発されるものと期待されています。
 私達の研究室ではラットを用いた脊髄損傷モデルを作製し、マクロファージ等の免疫系の細胞が放出する一酸化窒素(NO)が神経細胞のアポトーシスに重要な役割を果たしていることを明らかにしましたが、一方では、マクロファージやマイクログリアが損傷後、速やかに神経細胞の生存維持に関与するグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)を産生することも明らかにしました。これらの結果から、マクロファージは損傷部周辺の神経細胞を脱落させるか、生存させるか、選別しているのではないかと考えられます。今後、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)やGDNFの遺伝子発現の上昇に係わる物質が解明されれば、私達の研究は新たな脊髄損傷に対する治療へと結びつくものと思われます。
 今回のBMC一般公開では、パネル展示により、中枢神経系の損傷とGDNF の発現について最近得られたデーターを中心に紹介したいと思います。

 

研究目的・研究概要:

 脳の運動系神経回路網において、大脳基底核は意識しない自然でスムーズな運動に携わる部位と考えられています。中でも、パーキンソン病と関連する黒質-線条体系ドーパミンと呼ばれる神経組織は、運動に対する調節作用を発揮していることが知られています。本研究チームでは、ドーパミン神経の機能を遺伝子レベルで解析することを目的として、
ドーパミンの生合成、貯蔵及び放出という神経活動の本質に係わる酵素・タンパク質の遺伝子発現の調節機構の解明に取り組んでいます。また、ドーパミン神経の維持に係わる神経栄養因子の解析も併せて行っています。

生体ミメティックセンサー研究チーム

公開内容:「音源分離システムのデモンストレーション」

 複数の音源からの音が混じり合った混合信号を計算機で処理し、元の音源を復元し、聞きとりやすくすることを音源分離と言います。音源分離は、十人の部下が同時に話した内容を理解できた聖徳太子を、ロボットとして実現する上で必要な技術です。
 今回の公開では、反響のある普通の室内で、2名の人が同時に話す声を2つのマイクロホンで計測し、その混合信号を計算機で処理し、1分未満で2名の話した内容を分離できることをデモンストレーションします。高速かつ質の高い音源分離を体験して下さい。

研究目的・研究概要:

 人間に代表される生体が、知的で精緻な運動・振る舞いを行うためには、生体自身と周囲環境についての総合的な認識が必要です。本研究チームでは、見る、聞く、触るという、生体の感覚情報処理の仕組みを解明すると同時に、生体の感覚機能と同じあるいは、それを越えるセンサーシステムを人工的に実現するための基礎技術の研究と、その実環境への適用を行っています。具体的には、複数の音源が混合した信号の処理による元音源の分離、画像や他のセンサー情報の利用による物体の3次元形状の復元、環境との相互作用による感覚機能の学習を研究しています。

制御系理論研究チーム

公開内容:「生体を模倣したロボット等のデモンストレーション」

1)多脚歩行ロボット

 脊椎動物や昆虫の歩行パターンは、その歩行速度に応じて変化しますが、このパターンを生成しているのは、Central Pattern Generator (CPG)と呼ばれる神経発振器群であると考えられています。CPGでは,複数の神経発振器が、局所的な相互作用によって歩行パターンを生成しているところに特徴があります。
 このCPGモデルを模倣したのが、自律分散型多脚歩行ロボット「キャタピラー」です。キャタピラーは各脚にひとつずつのコントローラを持つ非常に独立性の高いモジュール構造をしています。このモジュールを連結するだけで多脚歩行ロボットを構成しています。このとき各脚は隣接する脚とのみ通信をするだけで歩行パターンを生成しています。こうした独立性の高いモジュール構造は、例えば一脚の故障による全体の機能が停止してしまうことを防ぐこと等が期待されます。また故障した脚を交換することで故障からの復帰が速やかに行なわれるという利点を持っています。

多脚歩行ロボット

2)マスタ・スレイブシステム

 操作者がロボットアーム(マスタロボット)の先端を動かすことで、遠く離れた所にある別のロボットアーム(スレイブロボット)の操作を可能にするマスタ・スレイブシステムについての研究を行っています。このようなロボットシステムを使うことで、宇宙空間や原子炉など人間が立ち入ることの出来ない空間での作業が可能となります。このとき操作者に違和感のない操作環境を提供したり、操作対象の映像をCCDカメラを用いて操作者に見せることで操作を容易にします。さらに両ロボットに操作者の動作を学習させ、操作の手助けをすることで、初心者にも熟練者並みの操作が行なえるようなシステムの構築が期待できます。

研究目的・研究概要:

 大規模、複雑な脳の運動機能を理解するためには、フィードバック制御を中心とする従来の制御理論に加えて、新たな制御概念が必要になります。生体の運動系では、並列分散アーキテクチャ及び自己組織化機能が本質的な役割を果たしています。本研究チームでは、これらの機能を解明し、自律分散制御システムの理論的枠組みを、非線形ダイナミカルシステムに関する理論を基礎に追求しています。さらに、これらの理論をもとに歩行運動や上肢動作の時空間運動パターン生成機構の解析及びロボット制御への応用を理論、実験の両面から実施しています。