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ブフネラゲノムの全塩基配列の決定に当たっては、全ゲノムショットガンシークエンス法※4を用いました。今回ゲノム解析に成功したのは、エンドウヒゲナガアブラムシ(Acyrthosiphon
pisum)の細胞内に生息する、ブフネラ(Buchnera sp.
APS)とよばれるバクテリアです。
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1)
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大腸菌に近縁であるが小さなゲノムサイズ
ブフネラのゲノムDNAは、640,681bです(これに加えて小さなプラスミドが2個ある)。これは既知のゲノムのなかで2番目に小さなゲノムです。系統解析の結果、大腸菌に非常に近いことが既に分かっていましたが、4.6Mbの大腸菌のゲノムに比べてそのサイズは7分の1しかありません。また、ブフネラに特有な新規遺伝子は4つのみであり、ほかのほとんどすべての遺伝子は大腸菌の相同遺伝子です。
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2)
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宿主と相互依存関係であることを裏付ける遺伝子セット
583個のタンパク質をコードする遺伝子を同定しました。その遺伝子セットは、自由生活性バクテリア(大腸菌や枯草菌など)とも、寄生性バクテリアとも、まったく異なるユニークなものです。例えばブフネラは、宿主が合成することが出来ない必須アミノ酸の合成に関与する遺伝子をそろえていますが、宿主が合成可能な可欠アミノ酸に関する合成遺伝子をほとんど持っていません。これは、ブフネラと宿主であるアブラムシの間でアミノ酸合成が“ギブアンドテイク”の関係にあることを如実に表すものです。
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3)
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DNAレベル、細胞構造レベルで無防備であることを示す遺伝子セット
ブフネラは、“DNA修復関連遺伝子を多く失っていること”、“細胞壁合成能力がないこと”が明らかになりました。これらの特徴は、ブフネラがDNAレベルで細胞構造が脆弱であり、宿主の外では生存することが出来ないことを意味しています。2億年という長い期間にわたり、宿主昆虫に保護されて進化した結果だと解釈されます。
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4)
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転写制御の欠失
大腸菌等には数多く見られる二成分シグナル伝達システムをブフネラは持ちません。さらに転写制御の遺伝子はほとんど見つかりません。これらの特徴は、ブフネラが環境の変化に対応できないことを示しており、宿主細胞内の安定した環境でのみ生存可能であることを示しています。
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5)
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生存に必須な遺伝子の欠如
ブフネラは、リン脂質合成酵素をほとんど失っているので細胞膜を作ることができず、宿主に依存していると予想されます。自分の細胞膜さえも宿主に依存している点は、ブフネラが独立したバクテリアから、ミトコンドリアのようなオルガネラに近い存在に進化しつつあることを示唆するものです。
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