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まず、Cre組換え酵素(ファージ※2由来の遺伝子組換え酵素)を、Emx1という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター※3の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス(Creマウス)を作製しました。詳細な解析により、このマウスは、大脳皮質の興奮性神経特異的に、2個のloxP(Cre組換え酵素によって認識されるファージ由来の塩基配列)で挟まれた遺伝子を切り出す能力を持つことがわかりました。このCreマウスと、NMDA受容体の遺伝子(NMDAR1)が
2個のloxPで挟まれたマウス(loxPマウス)とを交配しました。交配の結果生まれたCreとloxPの両方を持つマウスでは、大脳皮質でのみCre組換え酵素が働いて、loxPで挟まれたNMDAR1遺伝子を切り出し脱落させました。結果として、大脳皮質の興奮性神経特異的なNMDA受容体のノックアウトマウスが得られました(図1)。
夜行性の動物であるマウスでは、ヒゲが人間の目と同様に外界を認識するために主要な働きを担います。そのため、体性感覚野は大脳皮質の最も大きな領域を占め、高度に発達しています。マウス体性感覚野では、神経細胞はどのヒゲからの刺激を受けるかによってグループを作り、グループ毎に明確に分離したそれぞれ樽のような形に集合します(バレル:
barrel)。その結果、一本のヒゲと一個のバレルを形成する神経細胞群とは一対一の対応をすることができる(図2)。このことは、体性感覚の正常な情報処理のために重要と考えられます。こうしたバレルは、生後一週間にヒゲから受ける入力のパターン(ヒゲの本数など)に応じて形成され、それを過ぎてから、ヒゲを抜くなどの処置をしてもバレルは変化しません。今回の研究では、開発した大脳皮質興奮神経特異的NMDA受容体ノックアウトマウスを用いて、バレル形成を大脳皮質発達のモデルとして解析しました。
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