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Press Release |
理化学研究所 |
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新しい魔法数(マジックナンバー)の発見 |
1.研究の背景 原子核は、陽子と中性子からできており、陽子数と中性子数がある決められた数を満たすと原子核は特に安定となります。この数を“魔法数(マジックナンバー)”と呼び、今までに「2」、「8」、「20」、「28」、「50」、「82」、「126」が知られています。この数字は、陽子、中性子ともに同じです。世の中のすべての元素は、“宇宙の進化”とともに生成されており、そのため元素の存在比は、魔法数のところで多くなっています。「2」はヘリウム、「8」は酸素、「20」はカルシウム、「28」はニッケル、「50」はスズ、「82」は鉛など魔法数に対応した元素は、人間の存在に大切なものです(図1)。 魔法数はまた、原子核が“殻構造”を持っていることの反映でもあります。同じような粒子が集団で結合状態を作ったとき、ある秩序が現れること示しており、それが原子核の性質を決定づけます。魔法数は、原子や金属のクラスターにもあり、それを見つけ、理解することは物理学上の研究の中でも基本的なものの一つです。
2.研究の成果 原子核の魔法数は、ドイツの核物理学者、マイヤーとイェンセンにより、新しい相互作用(軌道・スピン相互作用)を導入することで理解されていました。それ以後、魔法数は、陽子と中性子の混合比が変わっても動かないものと考えられています。 ところが、天然には存在しない不安定核(RI:Radioactive Isotope)ビームの発明により、不安定核の構造研究が可能となり、想像もしていなかった原子核の構造や現象が発見されました。谷畑主任研究員は1985年、米国・カリフォルニア大学ローレンスバークレー研究所でRIビームを効率的に分離し、実験に活用する装置を開発しています。 谷畑主任研究員らは、この装置を用いて軽い元素(リチウム、ベリリウム、炭素)の原子核半径を測定する実験を世界に先がけて1985年から実施しました。そして、核半径は質量数ではなく、“中性子数や陽子数とともに変化する”ことを発見し、その成果は今も定説となっています。さらに、中性子過剰な同位体の場合、原子核の表面付近では中性子のみで層を作っていることを発見しました。この層は、「中性子スキン」「中性子ハロー」と呼ばれ、今日、中性子過剰の核では一般的に存在するものと考えられています。この発見は、今まで信じられてきた陽子と中性子は一様に混合しているという法則を覆すものです。 その後、谷畑主任研究員、小沢研究員らは1986年から、理研のリングサイクロトロンを用い、窒素、酸素、フッ素などの不安定同位体の核半径の精密な測定を行いました。この結果、核半径が中性子数「15」「16」の原子核で異常に大きくなることを発見しています(図2)。また同時に、これらの原子核の安定度の指標となる中性子の分離エネルギーを解析したところ、中性子過剰な場合にのみ、中性子数が「16」のところで特に安定であることが確認されました(図3)。
3.まとめと今後 本研究成果では、これまで変化しないと考えられていた魔法数が、中性子過剰核では違う数に変わってしまうことを見出しています。寿命の短い中性子過剰核では、これまで安定な原子核の研究で作られてきた理論が当てはまらない構造が次々と見つかっていますが、このように今までのルールが壊れるだけではなく、新しい秩序として現れる事例が初めて観測されたことになります(図4)。 この発見は軽い元素によるものでありますが、より重い元素で魔法数がどのように変化しているかは今後の問題です。RIビーム科学研究室では、現在、当研究所で建設している「RIビームファクトリー」施設によって、より重い元素まで魔法数の変化を解明することを計画しています。例えば「50」や、「82」やその付近での魔法数の変化は、核構造の見地からだけでなく、世界の原子核物理学者が今後進めて行く“宇宙における元素合成の過程についての研究”に大きな影響を与える可能性を秘めています。
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