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Press Release |
理化学研究所 |
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超伝導ウィグラーでの世界最高磁場を達成 |
一般に超伝導ウィグラーは、電子(または陽電子)蓄積リングの直線部に挿入する強力磁石であり、強い磁場で電子ビームの軌道を曲げることによって高エネルギーX線を発生させる装置である。 これまでの超伝導磁石の線材は主にニオブチタンが用いられており、この場合は、8.0T(テスラ)を越える磁場を実現することは困難で、もっとも強力とされるものでも以下のような性能であった。
このような背景のもと、理化学研究所は、米国・欧州連合・日本が中心となって運営する、国際科学技術センター(ISTC)を通じて、1996年以来ロシアのノボシビルスク市にあるブドカー原子核物理学研究所(BINP)と共同で、3ポールからなる高性能超伝導ウィグラーの開発研究を行ってきた。本年1月からSPring-8 の組立調整実験棟において、同ウィグラー単体での組み立て試験運転を行っていたところ、2月に超伝導ウィグラーとしては世界最高である10.3テスラを達成した。 今回組立試験を行っている超伝導ウィグラーは図1に示すように、クライオスタット内に液体ヘリウム漬けとなっており、4.2Kに保たれている。その外側は、断熱のため真空に保たれており、2枚の銅の熱遮蔽板(おのおの20K、80K)で囲まれている。図2に示すように、超伝導電磁石は3つのポールで構成されており、中央のポール部は3つのコイルが巻かれており、最内部のコイルがニオブ3スズ、残りはニオブチタンでできている。中央部が10テスラ、外側が1.9テスラとなるよう設計している。図2にホール素子を用いて測定した軸上磁場分布の1例を示す。 今回の成果で、超伝導電磁石が10テスラという強い磁場を達成できたのは、中心コイルの線材にニオブチタンとニオブ3スズを用いて、臨界磁場を大きくしたことによる。ニオブ3スズはニオブチタンと比べても非常にもろく扱いが難しいとされてきたが、線材を安定に製作する技術を確立した。 このような強磁場の超伝導ウィグラーを電子蓄積リングに設置すると、高エネルギーのX線が得られる。特にSPring-8のような高エネルギーの電子蓄積リングに設置した場合、これまでにないMeV領域のX線が得られ光源としての能力がさらに高まる。 このように高いエネルギーのX線はいろいろな分野において極めて利用価値が高い。例えば、重金属に照射すると対生成反応により低エネルギー高強度陽電子源が得られ、陽電子顕微鏡などに利用できる夢が広がる。また、ベリリウム9に照射して光核反応によって放射能のないきれいな中性子源を実現することができる。特に高輝度陽電子源が実現することも夢ではないといえる。
(参考資料3)
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