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Press Release |
理化学研究所 |
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50Tflopsの分子動力学専用計算機完成 |
理化学研究所情報基盤研究部部長 戎崎俊一(えびすさきとしかず)を中心とする研究グループは、計算機の用途を限定することにより高速・高性能なシミュレーションが可能になると考え、分子動力学シミュレーション用の超高速専用計算機MDMの開発を進めている。 MDMは、原子の間に働く静電力や分子間力をフーリエ変換を使って高速に計算するためのシステムと、静電力の実空間部分や分子間力を計算するシステムとを合体したものである。それぞれのシステムを分けて専用計算機とすることにより、高性能・超高速のシミュレーションが可能になる。研究グループは、前者をWINE-2システム、後者MDGRAPE-2システムと名付けた。 このたび、WINE-2システムが完成し、また、MDGRAPE-2システムに使用するためのLSIであるMDGRAPE-2チップの開発に、日本IBM株式会社東京基礎研究所の協力を得て成功した。これにより、MDMの完成に向けて大きく前進したと言える。 WINE-2システムの開発にあたっては、まず、専用のLSIを特別に開発し、WINEチップと名付けた。WINEチップは、66MHzのクロックで駆動され、その計算性能は20Gflops(1秒間に200億回の演算をする)である。これは現在もっとも早いパソコン用CPUであるPentium IIIチップ(733MHz版)の約27倍の速さである。このような高性能は、チップを専用化し無駄な部分を徹底的に削ることにより達成された。 このWINEチップを2688個並列接続してWINE‐2システムが完成した。そのピーク性能は50Tflopsを超える。これは、現在世界でもっとも速いとされている、米国サンディア研究所のASCI REDマシンの約18倍である。これまでに測定した実効性能は、約10Tflopsで、これも上記ASCI REDマシンの5倍である。 一方、MDGRAPE-2チップと名付けたLSIは、100MHzのクロックで駆動され、演算性能は16Gflopsである。このチップを4個搭載したPCIカードも完成し、パーソナルコンピュータに接続して動作が確認された。 今後、MDGRAPE-2チップを3000個程度並列接続することで、MDGRAPE-2システムを完成させる。あわせて、WINE-2のソフトウェアの整備とハードウェアの拡張によって実効性能を30Tflops程度まで向上する見込みである。これによって、全体として100TflopsのMDMを完成させる予定である。 用途を絞り無駄をなくした専用計算機は、汎用計算機に比べて100倍から1000倍高い演算性能が得られる。このような専用計算機のアプローチの有用性は、1995年に東京大学教養学部が開発した、世界最初の1TflopsマシンGRAPE‐4でも実証されている。これは銀河の衝突や星団の進化のシミュレーションのための専用計算機であり、MDMはその流れを汲むものである。MDMならば、百万個の原子を含んだシミュレーションが可能であり、水中で働く生体高分子の大規模なシミュレーションが実現できると予想される。 理化学研究所では、さらにこの考え方を進めて、分子動力学シミュレーションだけでなく、電子状態のシミュレーションやゲノム系列の解析用の専用計算機を開発する提案をしている。これらの専用計算機の目標性能は1Pflops (1秒間に1000兆回の演算)である。 なお、WINE-2システムおよびMDGRAPE-2チップは、11月16日から19日に米国オレゴン州ポートランドで行われるHigh Performance Networking and computing conferenceユ99(通称Supercomputing'99)に出展する。Supercomputingユ99は、スーパーコンピューティング、ネットワーク、通信技術、計算科学などの先端技術に関する世界最大の国際会議・展示会である。米国で1988年より毎年開催され、今年で11回目を迎える。
(問い合わせ先) 理化学研究所 情報基盤研究部 基盤研究部長 戎崎 俊一(えびすさきとしかず) TEL:048-462-1111 ext.3621 FAX:048-467-4078
(報道担当) 理化学研究所 広報室 吉垣 TEL:048-467-9272 FAX:048-462-4715 E-mail:koho@postman.riken.go.jp http:// www.riken.go.jp/r-world/press
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