Press Release 理化学研究所
平成11年9月30日
フロンティア研究システムの
新研究プロジェクトが発足


プレス発表情報一覧



 理化学研究所(小林俊一理事長)は、1986年にフロンティア研究システムを発足させ、先端的科学技術分野において、流動的・国際的な体制、柔軟な運営により新しい研究組織のモデルとしての役割を果たしてきました。わが国で先がけて契約制を導入し、また、研究者全体の約3割は外国人が占め、平均年齢は30代前半となっています。さらに、時代のニーズを先取りしたテーマを積極的に取り上げ、脳・神経科学研究が脳科学総合研究センターに発展したなど、最先端科学のフロンティア研究領域を大きく育て上げた実績は、国内外から高く評価されています。
本システムの和光本所の国際フロンティア研究のうち、1986年から続けられてきた動植物の恒常性維持機能の解明を目指す「生体ホメオスタシス研究」、新しい機能性材料の創製を目指す「フロンティア・マテリアル研究」の2分野は、本年9月末で研究を終えました。そして本年10月より、新たに生物における情報認識・伝達の未知のメカニズムを解明する「生体超分子システム研究」、及び時間的要素を入れた新しい材料開発を目指す「時空間機能材料研究」の2プロジェクトを立ち上げます。
 また、新しいフロンティア研究システム長として丸山瑛一国際フロンティア研究システムアドバイザー(政策研究大学院大学・教授)が10月1日付けで就任します。
 なお、10月26日に経団連ホール(千代田区大手町)で行われる「第21回理化学研究所科学講演会」において、2研究プロジェクトの内容を紹介する予定です。


1.生体超分子システム研究
  1)研究の概要
 構造多様性を特徴とする分子が集合体を生体膜中で形成し、情報の認識・伝達に関与することが想定できます。この集合体を生体超分子という新しい概念でとらえ、生体超分子が行う情報認識・伝達メカニズムを解析することによって、生物の特徴である多様性の一端を解明することができます。
本プロジェクトでは、糖鎖とスフィンゴ脂質の構造多様性に着目し、生体超分子の多様性を作り出すメカニズムと機能を明らかにすることにより、新しい情報処理・伝達の概念を確立することを目指します。
  2)体制
グループディレクター 糖鎖発現制御研究チーム
糖鎖機能研究チーム
スフィンゴ脂質発現制御研究チーム
スフィンゴ脂質機能研究チーム
2.時空間機能材料研究
  1)研究の概要
 自然界の多くの現象、特に生体系における高度な機能の多くは、局所的な物質/エネルギー移動を伴った過程に支配されていますので、「時間的発展」を考慮に入れた開放系として取り扱うことによって初めて理解できます。
 本プロジェクトでは、人工材料の構造や機能の中に時間的な要素を積極的に導入することにより、有機・無機・生体物質や金属などすべての材質を対象に、従来の材料研究では得られない、高度な機能を持った新しい材料の開発基盤を構築します。
  2)体制
グループディレクター 局所時空間機能研究チーム
散逸階層構造研究チーム
励起子工学研究チーム
トポケミカルデザイン研究チーム
 この両研究分野においては、従来のフロンティア研究の精神を引き継ぎ、またそれをさらに発展させて、科学技術研究の新分野の創造、社会的利益の貢献、産業・経済への大きなインパクトを与える技術開発が達成できるような、先導的な研究開発を実施することを目標にしております。その際、先端的研究開発の成果の産業化を促進する観点からも、企業研究者の積極的な参加を求めていきます。

(問い合わせ先)
理化学研究所フロンティア研究推進部 山田鏡司
Tel:
048-462-1111(内線6131)
Fax:
048-465-8048
報道担当:理化学研究所広報室 嶋田庸嗣
Tel:
048-467-9271
Fax:
048-467-4715
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システム長及び各研究グループリーダーの略歴

1.フロンティア研究システム長

  ○丸山瑛一(工学博士)
<略歴>
1934年(昭和9年)7月12日生まれ
1957年(昭和32年)3月 東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科 卒業
1959年(昭和34年)3月 同 大学理学部物理学科物理コース 修了
1959年(昭和34年)4月 (株)日立製作所 中央研究所 入社
1970年(昭和45年)2月  同 同 主任研究員
1977年(昭和52年)8月  同 同 主管研究員 丸山瑛一
 フロンティア研究システム長
1984年(昭和59年)8月  同 日立研究所 主管研究長
1985年(昭和60年)4月  同 基礎研究所 所長
1989年(平成元年)6月  同 理事
1991年(平成3年)2月  同 研究開発推進本部 技師長
1993年(平成5年)1月  同 退社
1993年(平成5年)2月 技術研究組合
     オングストロームテクノロジ研究機構 常務理事
1999年(平成11年)4月 政策研究院大学大学 教授
 
<専門分野>
 半導体物理、画像デバイス
 
<主な受賞歴>
1977年(昭和52年) 放送文化基金賞
1977年(昭和52年) テレビジョン学会 丹羽・高柳賞
1978年(昭和53年) 大河内記念生産特賞
1978年(昭和53年) 関東地方発明表彰
1979年(昭和54年) 全国発明表彰(科学技術庁長官賞)
1981年(昭和56年) 昭和56年度研究功績者表彰(科学技術庁長官賞)
1997年(平成9年) 関東地方発明表彰

2.生体超分子システム研究

  ○グループディレクター 鈴木明身(医学博士、理学博士)
<略歴>
1947年(昭和22年)2月16日生まれ
1971年(昭和46年)3月 信州大学医学部医学科 卒業
1977年(昭和52年)3月 東京大学大学院医学研究科 修了
1977年(昭和52年)4月 日本学術振興会 奨励研究員
1978年(昭和53年)5月 アルバート・アインスタイン医科大学医学部助手
1980年(昭和55年)8月 東京大学医学部生化学教室助手 鈴木明身
 生体超分子システム研究

  
グループディレクター
1982年(昭和57年)4月 (財)東京都臨床医学総合研究所生体膜研究部門室長
1989年(平成元年)8月  同 部長
 
<専門分野>
 糖鎖生物学
 
<主な受賞歴>
1985年(昭和60年) 日本生化学会奨励賞
1992年(平成4年) 井上学術賞

3.時空間機能材料研究グループ

 ○グループディレクター 国武豊喜(Ph.D.)
<略歴>
1936年(昭和11年)2月26日生まれ
1958年(昭和33年) 3月 九州大学工学部応用化学科 卒業
1960年(昭和35年) 3月 九州大学工学研究科応用化学専攻修士課程修了
1960年(昭和35年) 4月 ペンシルバニア大学大学院化学専攻入学
1962年(昭和37年) 8月 同 博士課程修了、Ph.D.授与(12月)
1962年(昭和37年) 9月 カルフォルニア工科大学 博士研究員 国武豊喜
 時空間機能材料研究グループ
  グループディレクター
1963年(昭和38年) 10月 九州大学工学部 助教授
1974年(昭和49年) 4月
  〜1999年(平成11年)3月
 同    教授
1992年(平成 4年)  4月
  〜1994年(平成6年)3月
 同    学部長
1999年(平成11年) 4月 北九州大学 教授
 
<専門分野>
  高分子化学、生物有機化学
 
<主な受賞歴>
1978年(昭和53年) 高分子学会賞
1991年(平成3年) 日本化学会賞
1996年(平成8年) 向井賞
1999年(平成11年) 紫綬褒章
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生体超分子システム研究

 生体内ではありとあらゆる場所で情報認識、伝達が行われており、これが生命を維持するための基本的な役割を果たしている。例えば、病原体が外部から侵入すればこれを認識し、排除機構にこの情報が伝達され病原体の侵入が阻止される。
 細胞レベルでは、細胞表面のひとつの分子(認識分子)が細胞外のひとつの分子(作用分子)を認識し、情報を細胞内に伝達するシステムがあることが知られている。しかしながら、最近、このシステムとは別の情報伝達システムの可能性が指摘され始めてきた。認識分子がひとつの分子ではなく、糖鎖やスフィンゴ脂質と呼ばれる分子が相互作用して生体超分子と呼ばれる複合体を形成する。さらにこれが集まって集合体(マイクロドメイン)を形成し、情報認識・伝達を行うというものである。本研究では、この情報認識・伝達の多様性を糖鎖やスフィンゴ脂質の構造の多様性から解明し、新しい医薬、情報処理システムの基盤構築を目指している。

時空間機能材料研究

 材料研究はあらゆる科学技術の基本となるものである。従来の材料研究では一定の分子・原子レベルの構造を作り上げて特定の機能を発現させる、いわば材料の安定な「空間的秩序」を対象とする研究が主流であった。
 一方、自然界に存在する現象、特に生体系における機能の多くは物質やエネルギーの移動など、時間変化を伴った過程に支配されている。従って、より高度な機能を材料に発現させるためには、周囲の環境に応じた種々の時間変化、すなわち「時間的発現」を考慮することが求められている。本研究では、人工材料の構造や機能の中に時間的な要素を積極的に導入することにより、有機・無機・生体物質や金属などすべての材料を対象に、従来の材料研究では得られない、高度な機能を持った新しい材料の開発基盤を構築する。
ナノスケールで自発的に周期配列した有機分子ドット構造
 (走査型トンネル顕微鏡像:300nm×300nm)
自発的にパターン化された高分子ハニカム構造
(原子間力顕微鏡像:30μm×30μm)
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