Press Release 東 京 大 学
理 化 学 研 究 所
平成11年4月15日
タンパク質と一本鎖RNAとの結合の仕組みを解明
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 東京大学と理化学研究所は、神戸大学や京都大学との共同研究により、ショウショウバエSxlタンパク質と一本鎖リボ核酸(RNA)によって形成される複合体の立体構造を決定することに成功しました。
 この発見は、タンパク質が一本鎖RNAを塩基配列特異的に結合する仕組みを解明した初めての例です。これにより、様々な生命現象の制御にかかわる一本鎖RNA結合タンパク質が遺伝子発現の転写後調節機構を行うメカニズムの解明が進むと期待されます。
成果の詳細は,Nature(平成11年4月15日号)に発表されます。

 生命現象は多種類のタンパク質や核酸などが構成するシステムによって営まれています。
 タンパク質は、核酸の特定の塩基配列を認識して複合体を形成し、生命現象における重要な機能を発揮します。例えば、細胞の分化を担う経路のスイッチングの役割を果たしたり、新たなタンパク質を作ったりするのです。したがって、タンパク質が特定の塩基配列を認識する仕組みの研究は構造学的・生物学的に非常に重要な研究課題となっています。

 近年、核酸とそれを認識するタンパク質からなる複合体の立体構造がいくつかの例で明らかにされ、核酸を認識するタンパク質の研究が進んできました。 ただし、そのどれもが「DNAなどの二重らせん構造を持つ核酸」と、「それを認識するタンパク質」からなる複合体を対象としたものでした。そこでは、タンパク質は二重らせんを形成する基となっている「塩基対」を認識して複合体を形成していました。
 ですから、「塩基対を持たず、高次元の構造を持たない一本鎖のリボ核酸(RNA)」と、「それを配列特異的に認識するタンパク質」の複合体の認識機構は、長年の疑問でした。

 今回、東京大学大学院理学系研究科生物化学教室の横山茂之教授(理化学研究所 ゲノム科学総合研究センター タンパク質構造・機能研究グループ プロジェクトリーダー兼務)らは、「ショウショウバエSxlタンパク質」と「トランスフォーマー(タンパク質の一種)をつくるメッセンジャーRNA前駆体中の12ヌクレオチドの一本鎖RNA」で形成された複合体について、その結晶構造を決定しました。
 その結果、この複合体の結合ドメインは、今までに知られていない構造をとっていることが解りました。すなわち、

  • このタンパク質は、二つ並んだRNA結合ドメイン(結合部位)を持っており、
  • 二つのRNA結合ドメインは,互いのβシート表面を向かい合わせにしてV字型の裂け目を作り、RNAは引き延ばされてこの裂け目に結合していて、
  • RNAの塩基は、互いの間で水素結合を形成せず、また、スタッキング(塩基の積み重なり;RNAやDNAで普通に見られる)もほとんどなく、タンパク質に向かって突き出していて、
  • このため、タンパク質はRNAの塩基と主鎖の両方と広範囲に特異的な相互作用することができている。

 という構造をとっていました。

 また、生物学的にも興味深い発見がありました。Sxlタンパク質は、トランスフォーマーのメッセンジャーRNA前駆体のポリピリミジントラクトと呼ばれる部分に直接結合し、その選択的スプライシングを調節することで、ショウジョウバエの性を決めていることがわかりました。
 本発見により、遺伝子発現の転写後調節機構の究明が進むことが期待されます。

【論文発表者】
東京大学 大学院理学系研究科 生物化学専攻
教授 横山茂之 (理化学研究所ゲノム科学総合研究センター タンパク質構造・機能研究グループ プロジェクトリーダー 兼務)
大学院生 半田徳子
助手 濡木 理 (理化学研究所ゲノム科学総合研究センター・共同研究員)
大学院生 栗本一基
大学院生 金仁 実
講師 武藤 裕
神戸大学 理学部生物学科
教授 坂本 博
京都大学 理学部生物物理学科
教授 志村令郎 (現、生物分子工学研究所所長)


(問い合わせ先)
横山 茂之
 東京大学 大学院理学系研究科生物化学専攻
Tel:03-3812-1805
fax:03-5689-5609
 理化学研究所 ゲノム科学総合研究センター
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