Press Release 理化学研究所
平成11年3月24日
40億光年遠方のガンマ線バースト源に鉄を発見
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 理化学研究所(小林俊一理事長)は、日本のX線天文衛星「あすか」により、1997年8月27日に起きたガンマ線バーストの残光を観測し、そのX線スペクトルに鉄の輝線を発見しました。
 このことは、ガンマ線バースト源の周辺には物質が存在することを示した初めての証拠といえます。これまで、ガンマ線バーストは周辺に物質の少ないところで起こると考えられてきたため、今回の発見は、この理解に見直しを迫る重要なものです。
 また、理研では、今回観測したガンマ線バースト源までの距離はおよそ40億光年であることも導きだしました。X線の観測からガンマ線バースト源の距離を導出したのは初めてのケースです。
 この成果については、平成11年3月24日(水)に、京都大学で開催される(社)日本天文学会春季年会でもプレス発表されます。

1 背景
 ガンマ線バーストとは、宇宙の一点から突然多量のガンマ線が爆発的に放射される現象です。しかし、「どのような天体が、いつ、どこでガンマ線バーストを起こすの か?」現在これは天文学の大きな謎となっています。
 ガンマ線バーストは、1960年代後半の発見以来、典型的には数秒から数10秒といったごく短い時間しか継続しない突発的天体現象とみなされてきました。しかし、1997年春にガンマ線バーストには数ヵ月から1年にも及ぶ長い残光現象がともなうことが発見され、バースト天体の位置をより詳細に追観測することが可能であることが分かりました。この発見によって、世界中の多数の望遠鏡がガンマ線バースト方向に向けられました。こうしてこの約2年間に世界各地で20例以上のガンマ線バーストの残光が観測されました。その結果、ガンマ線バーストという現象は数10から100億光年もの遠方で起こるらしいということ、そして、その時にガンマ線で放射されるエネルギーは、実に超新星爆発の100倍も大きい値(1053エルグ)に達する可能性があることなどがわかってきました。

2 これまでの考え方
 「ガンマ線バーストはどのようにして起こるのか?」という疑問には、この莫大なエネルギーはどうやって生成されるのか?という疑問と関連づけて、いくつかのモデルが提唱されています。

(1)「中性子星(ブラックホール)連星合体モデル」
 ひとつの有力なモデルとして、中性子星と中性子星あるいはブラックホールの連星系が潰れて、両方の星が合体し、そのときに生じた超相対論的な速度(Γファクタ=100〜1000)で膨張する火の玉によって爆発が起きるというものが提唱されています。ただし、このモデルでも超新星爆発の100倍以上の爆発エネルギーをつくり出すことは困難だという指摘がなされています。

(2)「大質量星崩壊モデル」
 一方、太陽の数十倍も重い星が崩壊するときにガンマ線バーストは起こるのだと考える、別のモデルも提唱されています。

 いずれの場合でも、観測されるような激しく変動するガンマ線を説明するには超相対論的な速度で膨れあがる火の玉の仕組みが必要です。これはバリオン(陽子などの重粒子)が極端に少ない清浄な環境でないと実現することができません。例えばE=1052エルグのエネルギーが開放されたとして、Γ=1000で膨張する火の玉を考えてみましょう。これに含まれるバリオンの総質量Mは、Γ=E/Mc2という関係で制限されます。この場合、太陽質量のせいぜい10万分の一程度(すなわち、バリオンが非常に少ない正常な環境)でなければならないことが分かります。このことから、ガンマ線バーストは、周辺に物質の少ないところで起こると考えられてきました。

3 理研による今回の成果

(1) 理化学研究所宇宙放射線研究室は、日本のX線天文学衛星『あすか』により、1997年8月27日に起きたガンマ線バースト残光を、バースト後ほぼ1日から観測し、減光していくX線残光を検出しました。

(2)しかもそのX線スペクトルに輝線構造を発見したのです。この輝線はバースト源近傍の鉄イオンから放射されたものであると考えられます。これはガンマ線バースト源の周辺に物質が存在することの、最初の証拠といえます。

(3) さらに、輝線は10000秒程度の時間で変化していました。このことから、鉄輝線はかなり高い密度の物質で生成されたと考えられます。

(4)輝線の中心エネルギーは約5keVで、z=0.33で赤方偏移したものであると解釈できます。このことから、バースト源までの距離はおよそ40億光年であると評価できます。X線の観測からガンマ線バーストの距離が導き出されたのは、初めてのケースです。

4 結論と課題
 これらの成果から、ガンマ線バーストは周辺に物質の少ないところで起こる、というこれまでの考え方を見直すことを要求します。

 おそらく、バースト源の周辺には、『火の玉』の発達するバリオンの少ない清浄な領域と、鉄輝線が放射された高密度の物質を含む領域が共存していると考える必要があります。ガンマ線バーストとその残光は、狭い立体角にビーミングされたジェット状の『火の玉』から放射されているという姿が正しいのかもしれません。
 『あすか』の発見は、単純な『中性子星(ブラックホール)連星合体モデル』では説明できません。『大質量星崩壊モデル』の方を示唆しているようです。

 どのような天体がガンマ線バーストを起こすのか? 鉄輝線の発見はこの謎に迫る大きな一歩です。

【論文発表者】
吉田 篤正 (理化学研究所 宇宙放射線研究室 先任研究員)
並木 雅章 (理化学研究所 宇宙放射線研究室 研修生 / 東京理科大学 修士2年)
大谷 知行 (理化学研究所 宇宙放射線研究室 研究協力員)
河合 雅之 (理化学研究所 宇宙放射線研究室 副主任研究員)
村上 敏夫 (宇宙科学研究所 助教授)
上田 佳宏 (宇宙科学研究所 助手)
柴田 亮 (宇宙科学研究所 / 学習院大学 修士2年)
宇野 伸一郎 (宇宙科学研究所 COE研究員)

(問い合わせ先)
理化学研究所 宇宙放射線研究室
  吉田 篤正 先任研究員
Tel:048-467-9446
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(報道担当) 理化学研究所 広報室 佃、吉垣
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