| Press Release | 理化学研究所 平成11年3月24日 |
| 40億光年遠方のガンマ線バースト源に鉄を発見 |
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1 背景 ガンマ線バーストとは、宇宙の一点から突然多量のガンマ線が爆発的に放射される現象です。しかし、「どのような天体が、いつ、どこでガンマ線バーストを起こすの か?」現在これは天文学の大きな謎となっています。 ガンマ線バーストは、1960年代後半の発見以来、典型的には数秒から数10秒といったごく短い時間しか継続しない突発的天体現象とみなされてきました。しかし、1997年春にガンマ線バーストには数ヵ月から1年にも及ぶ長い残光現象がともなうことが発見され、バースト天体の位置をより詳細に追観測することが可能であることが分かりました。この発見によって、世界中の多数の望遠鏡がガンマ線バースト方向に向けられました。こうしてこの約2年間に世界各地で20例以上のガンマ線バーストの残光が観測されました。その結果、ガンマ線バーストという現象は数10から100億光年もの遠方で起こるらしいということ、そして、その時にガンマ線で放射されるエネルギーは、実に超新星爆発の100倍も大きい値(1053エルグ)に達する可能性があることなどがわかってきました。
2 これまでの考え方 ひとつの有力なモデルとして、中性子星と中性子星あるいはブラックホールの連星系が潰れて、両方の星が合体し、そのときに生じた超相対論的な速度(Γファクタ=100〜1000)で膨張する火の玉によって爆発が起きるというものが提唱されています。ただし、このモデルでも超新星爆発の100倍以上の爆発エネルギーをつくり出すことは困難だという指摘がなされています。
(2)「大質量星崩壊モデル」 いずれの場合でも、観測されるような激しく変動するガンマ線を説明するには超相対論的な速度で膨れあがる火の玉の仕組みが必要です。これはバリオン(陽子などの重粒子)が極端に少ない清浄な環境でないと実現することができません。例えばE=1052エルグのエネルギーが開放されたとして、Γ=1000で膨張する火の玉を考えてみましょう。これに含まれるバリオンの総質量Mは、Γ=E/Mc2という関係で制限されます。この場合、太陽質量のせいぜい10万分の一程度(すなわち、バリオンが非常に少ない正常な環境)でなければならないことが分かります。このことから、ガンマ線バーストは、周辺に物質の少ないところで起こると考えられてきました。
3 理研による今回の成果 (2)しかもそのX線スペクトルに輝線構造を発見したのです。この輝線はバースト源近傍の鉄イオンから放射されたものであると考えられます。これはガンマ線バースト源の周辺に物質が存在することの、最初の証拠といえます。 (3) さらに、輝線は10000秒程度の時間で変化していました。このことから、鉄輝線はかなり高い密度の物質で生成されたと考えられます。 (4)輝線の中心エネルギーは約5keVで、z=0.33で赤方偏移したものであると解釈できます。このことから、バースト源までの距離はおよそ40億光年であると評価できます。X線の観測からガンマ線バーストの距離が導き出されたのは、初めてのケースです。
4 結論と課題
おそらく、バースト源の周辺には、『火の玉』の発達するバリオンの少ない清浄な領域と、鉄輝線が放射された高密度の物質を含む領域が共存していると考える必要があります。ガンマ線バーストとその残光は、狭い立体角にビーミングされたジェット状の『火の玉』から放射されているという姿が正しいのかもしれません。
どのような天体がガンマ線バーストを起こすのか? 鉄輝線の発見はこの謎に迫る大きな一歩です。
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