| Press Release | 理化学研究所 平成11年2月25日 |
| 新同位元素31Fの発見と酸素同位体の存在限界の決定 |
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1)理化学研究所(放射線研究室、サイクロトロン研究室、リニアック研究室)では、リングサイクロトロンを用いた不安定核(RI)に関する最先端研究を進めている。とりわけ不安定核をビームとして生成する方法(RIビーム)ならびに装置(不安定核分離装置「RIPS」)を開発し、そのビーム強度は世界最大である。 2)本研究において不安定核は、天然に存在する安定な原子核をビームとして、標的とする原子核に衝突させ、ビームとした原子核から陽子・中性子を剥ぎ取ることによってつくられる。この標的との衝突によって作られた多種多様な不安定核を不安定核分離装置により分析することによって、その中から新同位元素を発見することができる。これまで、世界の他の研究所では達成できなかった、中性子超過剰な新同位元素31Ne, 37Mg、38Mg、40Al、41Alの発見を50Ti、48Caビームで実現してきた。 3)今回の成果はリングサイクロトロンにより核子当たり9千4百万電子ボルト(94 MeV)まで加速された40Arビームを用いることにより達成された。この際のビーム強度は前回の50Ti、48Caビームと比べ約20倍強く、生成率の小さな同位元素を効率的に生成することが可能となった。この研究はロシア・連合原子核研究所フレロフ核反応研究室との国際共同研究により行なわれた。 4)40Arビームをタンタル標的に4日間照射することにより、新放射性同位元素31Fを8個検出した。ちなみに31Fは弱い相互作用でベータ崩壊する不安定核であるが、中性子を束縛して原子核として安定に存在する核である。一般に、中性子過剰核が原子核として安定に存在する場合、その寿命として約1000分の1秒以上は期待できる。この寿命に対し、40Arビームで生成された核の標的から検出器(約30m下流)までの飛行時間(約250ナノ(10-9)秒)は十分短い。従って、31Fを検出することができたことはこの核が原子核として安定に存在していることを示唆する。 5)同時に、28Oは原子核として安定に存在しないことを確認した。この核の予想収量は40個程度であったにもかかわらず、1個も検出することができなかった。この予想収量については、31Fの発見によって22Cと31Fの収量から内挿により得ることができたため、予想収量値の信頼度は高い。収量の予想値と測定値の大きな違いは、寿命が飛行時間に対して非常に短いからだと考えられる。実際、中性子過剰核が原子核として安定に存在しない場合は強い相互作用で崩壊するため、寿命は10-22秒程度ときわめて短く、本研究手法では検出することができない。同様に、24N、25N、27O、30Fも原子核として安定に存在しないことがわかった。 6)興味深い点は、酸素同位体の中性子過剰側存在限界は24Oで中性子数が16なのに対し、フッ素同位体では少なくとも中性子数22をもつ31Fが原子核として安定に存在していることである。すなわち、酸素からフッ素へと陽子を1個増やすと、原子核内に束縛される中性子の数が一挙に6個も増えることになる。現在この結果を統一的かつ定量的に説明できる理論はなく、今後多くの議論を生むものと期待される。 7)理論的には未発見の同位元素が4000種以上存在すると予想されており、これらの同位元素を発見し、その性質を明らかにする研究は、原子核の構造研究にとって重要であるばかりか、宇宙の元素合成の謎を解く鍵を与える。理化学研究所はRIビームファクトリー計画を推進しており、これが実現すると約1000種の新たな同位元素の発見とその研究が可能となる。また、この計画では国際共同研究を推進しており、今回共同研究を行なったロシア・連合原子核研究所フレロフ核反応研究室も協力姿勢を表明している。 注) (問い合わせ先)
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