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理研BNL研究センターが発足

― ノーベル賞学者 T.D.Lee をセンター長に迎えて ―

平成9年 9月 18日
理化学研究所


 理化学研究所(理事長:有馬朗人)は、日米科学技術協力協定(昭和63年)に基づき平成8年5月に締結された科学技術庁−米国エネルギー省による基礎科学技術分野における研究協力の実施取決めで合意された「スピン物理」研究推進のために、米国ブルックヘブ ン国立研究所(BNL)と、理研BNL研究センター設立に関して合意に達し、本年10 月1日を以て同センターを発足させることとなった。
 同センターは、ニューヨーク州アプトンにあるBNLの物理研究棟内に設置され、BNLが建設中の超大型衝突型重イオン加速器RHICを利用した実験研究と、それを推進するための計算機シミュレーション研究を含む理論物理学研究部門からなる。本年はその内 の理論物理研究部門が発足する。
 同センターを率いるのは、1957年に「パリティーの非保存」に関する研究でノーベル物理学賞を受賞したT.D.Leeコロンビア大学教授である。彼の指導のもと、非常勤の指導的研究者と、公募に応じた19ケ国106名の中から厳選された4名のポスドクと2名の若手研究者をもって発足。活気あふれる研究所を目指し、スピンを指標として宇 宙・物質の根源に迫る理論・実験研究を推進する。同センターの発足は、既に内外の多く の研究者の注目の的となり、多くの期待が寄せられ、予算成立直後に雑誌ネィチャーに紹 介された。
 理研とBNLは、同センターの発足に先立ち、現地時間9月22日(月)BNLにて開所式を開催する。

(問合せ先)

放射線研究室

石原 正泰 主任研究員      048−462−1111 内線3271
理研BNL研究センター推進室 矢野倉 実
                 +1−516−344−8095(BNL内)
                 048−467−9249
報道担当:広報室 越間・佃・吉垣 048−467−9270

<参考>
RHICについて

 RHICとは、BNLが約5億ドルの予算で建設中の超大型衝突型加速器であり、重イオンおよびスピン偏極した陽子を加速できる衝突型加速器として整備中である。周長約4キロメートル、トンネル内に設置した2本の加速器で構成される。入射器として現有のリニアック、タンデムバンデグラフとそれに続く、ブースターシンクロトロン、AGSを利用する 。RHICでは、陽子(水素の原子核)を最大250GeVまで、金のような重い原子核の場合で核子当り100GeVまで加速できる性能を有する。RHICでの実験場所は、衝突型加速器として6カ所に限られているが、その中でフェニックスとスターと呼ばれる 2つの超大型実験設備の建設がすすんでいる。
 理研は、フェニックスに、スピン物理研究のために必要な素粒子対検出装置を追加整備し、また加速器に加速粒子のスピン制御に必要な「スネーク」とよばれる磁石等を開発整 備する。
 現在RHIC本体ならびに理研分担分についても順調に整備が進み、1999年6月の完成を目指している。

脚注;
 GeVとは、10億ボルトの電圧での加速エネルギーを意味する。100GeVとはその100倍の電圧での加速であり、金の場合、合計で約20000GeVとなる。

「スピン物理」研究について

「スピン物理」とは、原子核を構成する陽子・中性子がもつスピンと呼ばれるコマ運動に注目して物質の究極の姿に迫る物理学の分野である。陽子・中性子は、クオークとよばれる素粒子3つから構成されるということが分かっているが、それを取りだすことは出来ていない。1つ1つのクオークの持つスピンの大きさも分かっているが、3つ分を合計して も陽子や中性子のスピンを説明することは出来ない。外にスピンを持つ何かがあることが 推定され、それがグルーオンと呼ばれているが、このスピンの大きさは計られていない。
 また、宇宙はビックバンと呼ばれる原始の姿から徐々に冷えて現在に至ったと多くの研究者が考えている。エネルギーだけが満ちていた世界からクオークやグルーオンが創られそして陽子・中性子が合成されていった過程は、まさにエネルギーから質量が創られていった過程でもあり、過去そして現在の宇宙を知るためには不可欠であるとともに、これら の過程の中で、現在の宇宙を支配する4つの力である、重力、強い力、弱い力、電気的力が分離してきたとも考えられている。したがって、これらを実験的にまた理論的に解明することは、私たちの宇宙そのものに対する理解そして4つの力の統一的な理解へその知識 を深めることになる。