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■ミュータントマウスで小脳の秩序の源を探す ――小脳の形成をどのような方法で探っているのですか。 御子柴:まず、脳の発生について簡単に説明しましょう。1個の受精卵が分割して、内胚葉、中胚葉、外胚葉に分かれ、さらに分化が進んで、複雑な生体がつくられていきますが、外胚葉がくぼんでチューブ状の神経管になり、それが屈曲したり、一部が肥大したりして脳ができます。
脳は、大脳、脳幹、小脳などに分かれており、小脳は運動の制御や運動学習を担当しています。その表層の部分は小脳皮質で、内側から外側に向かって、顆粒細胞層、プルキンエ細胞層、分子層という3層構造にきれいに分かれており、大脳皮質と同じように表面にはシワがあります。 ところが、リーラーという突然変異のマウス(ミュータントマウス)では、表面のシワもないし、小脳皮質の3層構造も壊れて、神経細胞の位置がバラバラになっているのです。そこで、リーラーが異常になっている原因を突き止めれば、正常マウスで秩序が形成される理由がわかる、と考えて研究を進めました。私たちが用いたのは免疫学的手法です(図1)。 ――その抗体についての特許を申請したのですか。 御子柴:当時はパテント意識がほとんどなく、残念ながら、この抗体については申請していません。 |
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■Zic遺伝子の多様なはたらき ――Zic遺伝子とは、どのようなものですか?
御子柴:私が阪大から理研に移ってきた10年ほど前に、マウス小脳の顆粒細胞に多く発現しているタンパク質として見つけてZicと名づけて発表しました。現在は比較神経発生研究チームの有賀純チームリーダーがZicの研究を展開しています。 ■IP3レセプターの発見 ――研究の3本柱の残りの1つ、IP3レセプターというのは、どのようなはたらきをもつものなのですか。 御子柴:小脳失調症のマウスのうちでプルキンエ細胞を欠く、あるいは、あってもシナプスができないミュータントマウスから見出したのがIP3レセプターです(図2)。
IP3は細胞内のセカンドメッセンジャーですが、当時はその標的分子としてIP3レセプターが薬理学的に仮定されていたのです。つまり、IP3分子がIP3レセプターに付くことにより、細胞内にカルシウムが放出されるとされていた。その実体がP400だったのです。
IP3スポンジを使えば、IP3の感度の良い定量化が可能になりますし、また、細胞内ではIP3がレセプターに付く前にスポンジと結合してしまうので、細胞内カルシウム放出の阻害剤にもなります。
さらには発想の転換によって、面白いタンパク質を見つけました。IRBITと名付けましたが、元々IP3レセプターのIP3が結合する部位と全く同じ場所に結合している内在性分子で、IP3が来ると外れるのです(図5)。このIRBITはIP3レセプター以外の複数の分子に結合して、驚くほどの多様かつ重要なはたらきをしていることが次々と明らかになってきており、研究室では皆が興奮しながら研究をしています。そのほか、カルシウムの貯蔵庫である小胞体は、従来の教科書的概念であった「網状の構造」以外にIP3レセプターをもったまま顆粒となって、分子モーターを使って微小管にのって細胞内をダイナミックに動いてることもわかりました(図6)。 |
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