理研筑波研究所 バイオリソースセンター 動物変異動態解析技術開発チームの阿部訓也(くにや)チームリーダー、杉本道彦 開発研究員、遺伝工学基盤技術室の小倉淳郎 室長らはマウスによる実験で、多能性細胞が分化・増殖するときに重要な役割を果たす遺伝子「Vps52 」を発見した。再生医療で注目されるES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)の分化制御技術の開発につながると期待される。米国テキサス大学オースチン校などとの共同研究による成果。
哺乳類の胚(はい)(発生初期段階の個体)には、さまざまな細胞や組織に分化し、体全体を形成する能力を持つ多能性細胞が存在する。胚が子宮へ着床した後、細胞や組織において大きな変化が生じ、多能性細胞は原始外胚葉と呼ばれる組織へと分化する(図左)。この組織分化過程は、細胞と細胞の相互作用を介して制御されることが知られていたが、その役割を担う因子についてはほとんど分かっていなかった。
研究グループは半世紀以上前に見つかった、多能性細胞の初期分化や増殖に異常を示す突然変異体マウス「tw5」に着目(図右)。ゲノム解析や遺伝子改変技術を組み合わせて「Vps52 」を突き止めた。Vps52 は、酵母では細胞内の物質輸送を担うことが知られていたが、哺乳類では細胞間相互作用を介して多能性細胞の分化や増殖を制御することが、この研究により明らかとなった。また、tw5 の胚からつくったES細胞にVps52 を導入すると分化が正常に進行したことから、Vps52 はES細胞の分化に必須の因子であることも分かった。
※ 本研究は、文部科学省特定領域研究「生殖系列の世代サイクルとエピゲノムネットワーク」、新学術領域研究「哺乳類初期発生の細胞コミュニティー」などの支援を受けて行われた。
●『Cell Reports』(11月29日号)掲載


