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理研和光研究所 理研仁科加速器研究センター(RNC)実験装置運転・維持管理室の久保敏幸室長が率いる国際共同研究グループは、重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」を使った実験で、チタン-59やヒ素-90など、新たな核異性体を18種類生成・発見した。RNCが目指す「究極の原子核像の構築」につながる成果。

地球上には、金や鉄など安定な原子核が約300種類存在するが、理論的には約1万種類の原子核が存在するといわれ、そのほとんどが放射性同位元素(RI)と呼ばれる不安定な原子核である。RNCでは、RIBFを使って今までつくることのできなかった不安定原子核を大量に生成して、その性質を調べて究極の原子核像を構築し、鉄よりも重い(原子番号が大きい)元素が宇宙でどのように合成されたのか、その過程を調べる研究を進めている。今回発見した核異性体は、不安定原子核の核構造を強く反映しているため、その性質や崩壊様式を調べることは元素の起源を解明する上で非常に有効である。

研究グループは、超伝導リングサイクロトロンでウラン-238を光速の70%まで加速し、ベリリウムや鉛の原子核に衝突させて核異性体を生成。このとき核異性体は、さまざまな中性子過剰のRIの中に混じって生成される。その中から、超伝導RIビーム分離生成装置「BigRIPS」で核異性体を分離・収集し、その後、アルミニウム中に打ち込んで停止させた。そして、核異性体の崩壊に伴い放射されるガンマ線を測定したところ、全部で54種類の核異性体があること、そのうち18種類が新たな核異性体であることが分かった。さらに詳細に解析した結果、それらの半減期が数マイクロ秒程度であることが分かったほか、核構造に関するさまざまな知見を得ることにも成功した。

『Physical Review C』Volume 86, ISSUE 5掲載