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埼玉県“多様な働き方実践企業認定制度”プラチナ認定 清水智子

横浜研究所 Kim表面界面科学研究室
埼玉県“多様な働き方実践企業”プラチナ認定証授与式にて。左から古屋輝夫 理事、上田清司 埼玉県知事、筆者。
埼玉県“多様な働き方実践企業”プラチナ認定証授与式にて。左から古屋輝夫 理事、上田清司 埼玉県知事、筆者。

埼玉県には、従業員の仕事と子育ての両立を支援するために短時間勤務やフレックスタイム制を導入するなど、女性が生き生きと働き続けられる環境づくりに積極的な企業を、“多様な働き方実践企業”として認定する制度があります。このたび理研は、そのプラチナ(最高レベル)に認定されました。今年7月末に埼玉県庁で行われた授賞式には、古屋輝夫理事が代表として、私は育児をしながら働く女性のひとりとして参加しました。理研とともにプラチナに認定された8社はいずれも、医療福祉関係や銀行など女性社員の割合が比較的高い業種でした。研究職は男性が圧倒的に多いですから、今回のプラチナの認定はわれわれの誇るところです。

私にはこの11月で4歳になる娘がいます。保育園へのお迎えのため5時半過ぎに帰宅し、週末も多くの時間を取れない身ですが、所属長である金 有洙(キム ユウス)准主任研究員は、新しい装置の立ち上げという研究室の命運を賭けた仕事を任せてくれました。責任ある仕事が与えられることは、女性が生き生きと仕事をするために最も大切なことかもしれません。

極低温超高真空下での測定を趣味(仕事)とする私は、妊娠7ヶ月まで実験をしていました。同僚は妊婦がひょいひょい踏み台に上がって作業する様子をこわごわ見ていましたが、私は「無理したら駄目だけど、やりたいなら実験しなさい」という当時のボスである川合眞紀先生(現・理事)の指示に従いました。もし「危ないから実験停止」と言われていたら、“自分は不要”と感じ、出産後の復帰もスムーズにいかなかったでしょう。育児休暇を取得せず有給を使い果たし、娘が4ヶ月半になったときに復帰したのは、私のわがままであって決して立派な研究者だからではありません。意味不明に泣く赤ん坊の扱いは原子解像度のデータを得るよりずっと難しく、“保育園に通い始める=病原菌をもらい頻繁に休む”という方程式も予想外で、体重は激減。母親としてはかわいがる以外何もできない始末でした。この時期に私の実験アイデアを実行してくれた学生の存在は本当にありがたく、その成果が3年後に理研の英文広報誌『RIKEN RESEARCH』に取り上げられようとは! 救われた思いとうれしさでいっぱいです。

私のように意地を張って仕事せずとも、『理研子育てハンドブック』に書かれている制度や所内の保育所を利用すれば、自分と子どものペースに合わせて穏やかに復帰することが可能です(わが子よ、ごめん)。理研では保育園に子どもを送迎する男性研究者もよく見掛けます。ワークライフバランスを大事にする雰囲気は、より多くの女性研究者に勇気と幸せをもたらすことでしょう。

欲をいえば、理研には今後Two-body(Dual-careerともいう)opportunityに取り組んでいただきたいと考えます。日本では認知度が低いですが、夫婦が別居することなく実力相応の職に就けるように支援する取り組みのことで、米国の主要大学では二人同時に雇ったり、片方を雇った場合配偶者へ近隣の職を斡旋(あっせん)したりするサービスがあります。女性研究者の多くが研究者の夫を持っているそうです。わが夫も研究者(かつイクメン&カジメン)。日本人、外国人を問わず国際競争力のある優秀な研究者を獲得するため、そして獲得した人材が実力をフルに発揮できる環境づくりのために、Two-body(+ children)はセットで受け入れるのが理想、そう思いませんか?

M. A. Holmes, Nature 489, 327-328(2012)