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図:睡眠・覚醒のサーカディアンリズムが生まれるメカニズム

睡眠・覚醒のサーカディアンリズムが生まれるメカニズム

理研脳科学総合研究センター シナプス分子機構研究チームの宮本浩行 客員研究員と、発生神経生物研究チームの濱田耕造 研究員らは、24時間周期の睡眠・覚醒のリズム形成に神経伝達物質のセロトニンが関わる仕組みを解明した()。セロトニンが関係する不眠や睡眠リズム障害、うつ病などの理解が進み、新たな治療法の開発につながると期待される。米国のペンシルベニア大学とハーバード大学との共同研究による成果。

単細胞生物からヒトに至るまで広く生物の体内には、「サーカディアンリズム」と呼ばれる24時間周期のリズムが存在し、睡眠など多くの生物機能・現象に関わっている。これまで、脳の深部にある視交叉上核(しこうさじょうかく)(SCN)がこのリズムを形成することが知られていたが、SCNの信号がどこに伝えられ、どのように睡眠・覚醒のリズムが形成されるのか、そのメカニズムは未解明だった。

研究グループは、セロトニンを除去する物質を開発し、ラットに投与して脳の各領域の神経細胞の活動を測定。すると、ラットは昼夜を通して通常より短い周期で睡眠と覚醒を繰り返すようになり、睡眠・覚醒のリズムが崩壊することが分かった。一方、SCNは正常に機能しており、ほかの脳の領域でも24時間の神経活動リズムの崩壊は見られなかった。しかし、睡眠・覚醒を直接制御する前脳基底部・視索前野(しさくぜんや)(BF/POA)という領域では神経活動リズムが顕著に減少していることが分かった。そこで、BF/POAのセロトニン受容体を阻害したところ、ノンレム睡眠のリズムが崩壊した。

これらの結果から、SCNの信号はセロトニンにより活性化したBF/POA領域に伝えられ、そこで睡眠・覚醒に伴う神経活動(睡眠・覚醒機能)と統合され、24時間周期の睡眠・覚醒のサーカディアンリズムが生まれると考えられる()。


『The Journal of Neuroscience』(10月17日号)掲載